第一審において証拠とすることに同意した証拠尋問調書の証拠能力を、上告審に至つて争うことは許されない。
上告審において証拠能力を争うことが許されない一事例
刑訴法317条,刑訴法321条1項1号,刑訴法326条
判旨
被告人が公判期日等において書面を証拠とすることに同意した場合には、その後に至って当該書面の証拠能力を争うことは許されない。
問題の所在(論点)
被告人が一旦適法に証拠同意を与えた書面について、その後に任意性や証拠能力を争うことが許されるか(証拠同意の撤回ないし効力の有無)。
規範
刑事訴訟法326条1項に基づく証拠同意がなされた場合、その同意によって伝聞証拠の証拠能力が確定し、その後に当該証拠の証拠能力(任意性を含む)を争うことは許されない。
重要事実
被告人両名は、警察及び検察段階での自白、並びに裁判官の面前における証人尋問調書の任意性を争い、憲法違反や事実誤認を主張して上告した。しかし、記録によれば被告人等は、第一審において当該裁判官の面前における証人尋問調書を証拠とすることに同意していた。
あてはめ
本件において、第一審判決が採用した裁判官面前の証人尋問調書について、被告人等は記録上、証拠とすることに同意している。所論は当該裁判官が自白を強要したと主張するものでもなく、一旦同意がなされた以上、証拠能力を争う前提を欠く。したがって、当該調書の証拠能力を否定することはできない。
結論
被告人が証拠同意を与えた以上、その後に証拠能力を争うことは許されず、上告は棄却される。
実務上の射程
証拠同意(326条1項)の効力に関する基本判例である。公判で一度なされた適法な同意は、特段の事情(同意の基礎となる事実の錯誤や強迫等)がない限り、後から争うことができないという不可逆的な性質を強調する際に用いる。実務上は、同意後の撤回制限の法理として重要である。
事件番号: 昭和29(あ)1270 / 裁判年月日: 昭和29年12月23日 / 結論: 棄却
被告人が証拠とすることに同意した供述調書について、その調書の作成されたときの情況を考慮して相当と認めたときは、これを証拠とすることができるのであつて、それ以上任意性につき調査することを要しない。
事件番号: 昭和25(あ)720 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
公訴にかかる饗応の事実について、被告人が終始これを争つてきた収賄事件の第六回公判期日において、検察官が右饗応の事実を立証するため検察官の作成したA某の供述調書につき証拠調の請求をしたのに対し、主任弁護人が「右証拠調に異議なし」と述べたからといつて、被告人が右供述調書を証拠とすることに同意したと認むべき特段の事情がなく、…