論旨に摘示する第一審判決の冒頭判示は被告人の経歴としての説示にとどまつて、同判決がこれを事由として累犯加重をしていないことは判文上明らかなところであり、仮りに第一審がこれを情状として量刑の判断資料に供したとしても、かかる事実を量刑の資料に供しても所論憲法の規定に違反するものでないと解すべきことは昭和二四年(れ)一二六〇号同年一二月二一日大法廷判決(判例集三巻一二号二〇六二頁以下)の趣旨とするところである。
第一審判決の冒頭説示を量刑の判断に供することと憲法第三九条
憲法39条,刑法56条,刑法57条
判旨
刑事訴訟法326条に基づき被告人が証拠とすることに同意した書面について、これを証拠として採用するか否かは、事実審裁判所の裁量に委ねられる。したがって、同意がある以上、作成時の状況を考慮した上で証拠に供したとしても、裁量の不当は生じ得るが、直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
被告人が証拠同意(刑訴法326条)をした書面について、裁判所がその作成状況等を踏まえて証拠として採用することの是非、およびその判断の性質が問題となる。
規範
刑事訴訟法326条により被告人が証拠とすることに同意した書面について、当該書面を実際に証拠として採用するか否かの判断は、書面が作成された際の状況等を総合的に考慮し、事実審裁判所の合理的な裁量に任されている。
重要事実
被告人が、特定の告訴調書について証拠とすることに同意を与えた。第一審裁判所はこれら告訴調書に証拠能力を認め、証拠として採用した。これに対し、被告人側は当該告訴調書の作成経緯等に問題があるとして、同意があるにもかかわらず証拠としたことは刑訴法326条に違反する違法なものであると主張し、控訴棄却後の上告理由とした。
あてはめ
本件において、被告人は問題となっている各告訴調書を証拠とすることに同意している。刑訴法326条の趣旨に照らせば、同意がある書面を証拠に供するか否かは事実審の裁量事項である。仮に弁護人が主張するように、告訴調書の作成時に何らかの特殊な状況が存在していたとしても、同意がある以上、それらを考慮した上でなお証拠として採用するかは裁判所の裁量に委ねられる。したがって、第一審がこれらを証拠に供した判断は、裁量の当否の問題を生じ得る余地はあるとしても、証拠法則上の違法があるとはいえない。
結論
被告人が同意した書面を証拠として採用することは裁判所の裁量に属し、本件において証拠に供したことは違法ではない。上告棄却。
実務上の射程
伝聞例外としての証拠同意があった場合、裁判所は当然に証拠採用を強制されるわけではなく、なお採用の必要性や相当性を判断する裁量権(証拠決定の自由)を有することを確認した。実務上は、同意があっても証明力が極めて低い場合や手続的正義に反する場合は、裁判所が裁量により却下し得る根拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)3682 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審公判廷で被告人及び弁護人が証拠とすることに同意した証拠については、上告審においてその証拠能力を争う主張をすることはできない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、第一審公判廷において、裁判官がAに対して行った証人尋問調書を証拠とすることに同意した。その後、被告人側は、当該調書の証拠採用手…