判旨
数個の犯罪行為が刑法上の包括一罪と認められるためには、犯行の日時・場所の近接性のみならず、それらが単一の意思の発動により行われたものであることを要する。
問題の所在(論点)
数個の犯罪行為がなされた場合において、それらが刑法上の包括一罪として扱われるための要件、特に主観的要件としての単一意思の必要性が問題となる。
規範
数個の行為が包括して一罪となるか、あるいは併合罪となるかは、犯行の日時、場所の近接性といった客観的事実に加え、主観的面において当該各犯行が「単一意思の発動」により行われたものと認められるか否かによって判断される。
重要事実
被告人は、第一審判決判示第四及び第五の各事実(具体的な罪名は判決文からは不明)に示された複数の犯行に及んだ。これらの犯行は、日時及び場所を異にするものであった。弁護人は、これらの行為が包括一罪にあたる旨を主張して上告したが、証拠(被告人・相被告人・証人の各供述)に照らし、一連の行為が単一の犯意に基づくものかどうかが争点となった。
あてはめ
本件における各犯行は、日時及び場所を異にしている。さらに、被告人や相被告人、証人の供述といった諸証拠を検討しても、被告人が本件各犯行を「単一意思の発動」により行ったものとは認められない。客観的な状況のみならず、主観的な一貫性も欠いている以上、これらを一体の罪として評価することはできない。
結論
被告人による各犯行は、単一意思の発動によるものとは認められないため、包括一罪ではなく併合罪として処断した原判決に違法はない。
実務上の射程
本判決は、包括一罪の成否において「単一意思」という主観的要件を重視している。実務上、窃盗や詐欺などの反復的な犯行がなされた際、それらを包括して一罪と主張するためには、犯行の反復継続性(時間・場所の近接)だけでなく、当初から一連の犯行を計画していた等の単一の犯意を立証・主張する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和25(あ)1851 / 裁判年月日: 昭和26年2月6日 / 結論: 棄却
論旨は、窃盗と賍物牙保とがその日時、場所において近接し、対象となる賍物も同一である場合には、基本的事実関係は同一と解すべきであるとして旧刑訴法の適用される事件についての公訴事実の同一性に関する当裁判所の判例を挙示し、原判決は、これら判例と相反する判断をしたものであると主張しているもののようである。論旨挙示の判例中昭和二…
事件番号: 昭和29(あ)3831 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
賍物四点の売却を依頼されて甲地より乙地にこれを運搬し、うち二点の売却を了したが他は売却するにいたらなかつた行為は、賍物運搬牙保罪の包括一罪として処罰すべきである。