論旨は、窃盗と賍物牙保とがその日時、場所において近接し、対象となる賍物も同一である場合には、基本的事実関係は同一と解すべきであるとして旧刑訴法の適用される事件についての公訴事実の同一性に関する当裁判所の判例を挙示し、原判決は、これら判例と相反する判断をしたものであると主張しているもののようである。論旨挙示の判例中昭和二五年(れ)同二七五号同年六月三〇日第二小法廷判決は、原判決の宣告された後の判例であるから、これを除外し(なお右判決も従来の判例を変更したものではない)その他の判例に照して見ても原判決は窃盗と賍物牙保とは常に公訴事実の同一性がないとか或は犯罪の日時場所が隔つている場合には公訴事実の同一性がないとか判断したのではなく、基本的事実関係が同一でないから公訴事実の同一性がないと判断したに止まるのであるから、その理論においてはこれらの判例と相反する判断をしたことにならないのである。(昭和二五年(あ)第八四号同年二月二一日第三小法廷判決参照)
窃盗と賍物牙保との公訴事実の同一性の有無に関する判例違反の主張の適否―原判決言渡後の判例と刑訴法第四〇五条第二号
刑法235条,刑法256条2項,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法405条2号
判旨
窃盗と贓物牙保(盗品等媒介)との間において、日時、場所が近接し対象財物が同一であっても、基本的事実関係が同一でない場合には、公訴事実の同一性は認められない。
問題の所在(論点)
窃盗罪と贓物牙保罪(盗品等媒介罪)の間において、日時・場所の近接性および対象財物の同一性がある場合に、刑事訴訟法312条1項にいう「公訴事実の同一性」が認められるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)は、訴因の変更が許される範囲を画定する概念であり、基本的事実関係が同一であるか否かによって判断される。窃盗罪と贓物罪の間で公訴事実の同一性が認められるためには、単に日時・場所の近接性や対象物の同一性があるだけでなく、両罪の具体的態様を比較して基本的事実関係が共通していると認められなければならない。
重要事実
被告人は窃盗の罪で起訴されたが、第一審において、検察官は訴因を贓物牙保(盗品等媒介)に変更する旨の請求を行い、裁判所はこれを許可した。しかし、原審(控訴審)は、本件の両罪間には公訴事実の同一性がないとして、この変更を許した第一審の手続を違法と断定した。検察官は、窃盗と贓物牙保が日時・場所において近接し、対象財物も同一である以上、基本的事実関係は同一であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、窃盗と贓物牙保が常に公訴事実の同一性を欠くと判断したわけではない。しかし、本件においては、両罪の日時・場所が近接しているという事情があったとしても、具体的な犯行の基本的事実関係を詳細に検討した結果、それらが同一であるとは認められないとした。したがって、原判決が「基本的事実関係が同一でない」ことを理由に公訴事実の同一性を否定したことは、従来の判例に抵触するものではなく、妥当である。
結論
窃盗罪と贓物牙保罪の間において基本的事実関係が同一でない以上、公訴事実の同一性は認められず、訴因変更は許されない。
実務上の射程
公訴事実の同一性の判断において、単なる外形的要素(日時・場所・物)の重なりだけでなく、「基本的事実関係の同一性」という実質的基準を重視する姿勢を示したもの。答案上は、両罪が非両立的な関係(一方が成立すれば他方は成立しない)にある点や、社会的事実としての一体性を検討する際の指標として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)956 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
論旨第二點は、本件を檢事が賍物故買で起訴したのを原審が賍物牙保と認定したのは、訴追されない事實について判決をした違法があると主張する。しかし「裁判所は、その基本たる事實關係の同一性を害せざる限りは、公訴事實として摘示せられた事實とその態様において異り從つて適用法條を異にする事實を認定することができる」という當裁判所の判…