被告人は昭和二九年三月二六、七日頃婦負郡a村b地内において架設しあつたA株式会社所有某管理にかかる三、二粍硬銅線二九貫五百匁位を窃取したとの主たる訴因である窃盗の事実と、被告人は同月二七日午前八時頃同郡同村bc駅南方百米位の草叢において二七、八才位の男より、三、二粍硬銅線二九貫五百匁位を、それが盗品であることの情を知りながら代金一万五千円位で買い受けたとの追加された予備的訴因である賍物故買の事実との間には、基本的事実関係の同一性を失うものでないから、右予備的訴因の追加を許しても違法でない。
窃盗の訴因に賍物故買の訴因を予備的に追加することの適否
刑訴法312条,刑法235条,刑法256条2項
判旨
窃盗罪の訴因と、その目的物と同一の物品に関する盗品等故買罪の訴因は、日時・場所・目的物等の基本的事実関係において共通性がある限り、公訴事実の同一性が認められる。
問題の所在(論点)
窃盗罪の訴因と盗品等故買罪の訴因との間に、刑事訴訟法312条1項にいう「公訴事実の同一性」が認められるか、その判断基準が問題となる。
規範
訴因変更(刑事訴訟法312条1項)が許されるための要件である「公訴事実の同一性」は、両訴因の基本的事実関係が同一であるか否かによって判断される。具体的には、犯行の日時、場所、方法、客体等の要素を総合的に比較し、社会通念上、同一の犯罪的事実を構成すると評価できる場合には、基本的事実関係の同一性が肯定される。
重要事実
被告人は、昭和29年3月26日から27日頃に銅線を窃取したとの事実(窃盗罪)で起訴された。その後、検察官は、同時期かつ同区域において、被告人が別の者から当該銅線を盗品と知りつつ買い受けたとの事実(盗品等故買罪)を予備的訴因として追加請求した。第一審はこれを許可し、故買の事実について有罪を言い渡した。弁護人は、窃盗と故買では公訴事実の同一性がないとして上告した。
あてはめ
本件における主たる訴因(窃盗)と追加された予備的訴因(故買)を対比すると、いずれも「昭和29年3月26・27日頃」というほぼ同一の日時において、「婦負郡a村b地内」という近接した場所で行われたものである。また、対象となっている客体は「3.2ミリ硬銅線29貫500匁位(時価2万9500円相当)」であり、全く同一の物品である。これらは被告人が同一の目的物を不法に領得したという一連の経過における所為であるといえる。したがって、両訴因は基本的事実関係において共通しており、社会通念上同一の事実を対象にしていると解される。
結論
両訴因の基本的事実関係は同一性を失わない。したがって、予備的訴因の追加は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
窃盗と盗品等関与罪(故買・譲受等)の間の訴因変更の可否に関するリーディングケースである。事後の関与罪であっても、時間的・場所的近接性があり、客体が同一であれば、実体法上の罪質が異なっていても「事実の単一性」が肯定されやすいことを示している。
事件番号: 昭和25(あ)1851 / 裁判年月日: 昭和26年2月6日 / 結論: 棄却
論旨は、窃盗と賍物牙保とがその日時、場所において近接し、対象となる賍物も同一である場合には、基本的事実関係は同一と解すべきであるとして旧刑訴法の適用される事件についての公訴事実の同一性に関する当裁判所の判例を挙示し、原判決は、これら判例と相反する判断をしたものであると主張しているもののようである。論旨挙示の判例中昭和二…
事件番号: 昭和29(あ)12 / 裁判年月日: 昭和30年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の犯罪行為が刑法上の包括一罪と認められるためには、犯行の日時・場所の近接性のみならず、それらが単一の意思の発動により行われたものであることを要する。 第1 事案の概要:被告人は、第一審判決判示第四及び第五の各事実(具体的な罪名は判決文からは不明)に示された複数の犯行に及んだ。これらの犯行は、日…