「被告人は昭和二七年一二月三〇日頃の午後一一時半頃肩書自宅において、Aが川崎市aB化学工業株式会社工場内より同工場長某の管理にかかる銅製艶付板三二枚(価格九万六千円相当)を窃取するに際し、同人から例の銅板を会社から持出すからリヤカーを貸して呉れと頼まれてこれを貸与しよつて同人の右窃盗の犯行を容易ならしめて幇助した」との窃盗幇助の公訴事実と、「被告人は昭和二七年一二月三一日頃肩書自宅において、Aから、同人が他より窃取して来たものであることの情を知りながら、銅製艶付板三二枚(価格九万六千円相当)を金三万円で買受け賍物の故買をした」との賍物故買の事実との間には、公訴事実の同一性がない。
公訴事実の同一性を欠く一事例
刑訴法312条1項,刑法235条,刑法256条2項
判旨
窃盗の幇助と、その正犯が盗取した財物の贓物故買は、併合罪の関係にあり公訴事実の同一性を欠くため、訴因変更や予備的訴因の追加は許されない。また、この違法は被告人の同意によって治癒されるものではなく、これに基づく判決は「審判の請求を受けない事件」についての判決として破棄を免れない。
問題の所在(論点)
窃盗の幇助事実と、その盗品に関する贓物故買の事実は、公訴事実の同一性(刑訴法312条1項)を有するか。また、公訴事実の同一性を欠く訴因変更に対して被告人が同意を与えた場合、その違法は治癒されるか。
規範
訴因の追加・変更は「公訴事実の同一性」を害しない限度で許容される(刑事訴訟法312条1項)。数個の事実が併合罪の関係にある別個の事実である場合には、公訴事実の同一性を欠くため、訴因の変更や予備的訴因としての追加を行うことはできない。また、この同一性の有無は客観的に定まるものであり、当事者の同意によって同一性の範囲が拡大されるなどの影響を受けることはない。
重要事実
被告人は、Aが工場から銅板を窃取する際にリヤカーを貸与して窃盗を幇助した事実(本位的訴因)で起訴された。その後、検察官は「Aから盗品であることを知りつつ当該銅板を買い受けた」という贓物故買の事実を予備的訴因として追加請求した。第一審は被告人側の同意を得て追加を許可し、本位的訴因を有罪とした。これに対し控訴審は、本位的訴因は証拠不十分で事実誤認があるとする一方、予備的訴因である贓物故買を認めて有罪判決を下した。
あてはめ
窃盗の幇助をした者が、後に正犯の盗取した財物を譲り受けた場合、窃盗幇助罪と贓物罪は別個に成立し、両者は併合罪の関係にある。本件においても、当初の窃盗幇助と追加された贓物故買は本来併合罪となるべき別個の事実であり、両者の間に公訴事実の同一性は認められない。したがって、贓物故買の事実を予備的訴因として追加することは許されない。第一審がこの追加を許可したことは法312条1項に違反し、被告人側の同意があってもこの違法は治癒されない。その結果、原審が予備的訴因に基づき有罪としたのは「審判の請求を受けない事件」について判決をした違法(法378条3号)があるといえる。
結論
窃盗幇助と贓物故買には公訴事実の同一性が認められず、予備的訴因の追加は違法である。原判決を破棄し、証拠不十分な本位的訴因について無罪を言い渡す。
実務上の射程
訴因変更の限界(公訴事実の同一性)を判断する際、実体法上の罪数関係が重要な指標となることを示した。特に、併合罪の関係にある事案では同一性が否定されやすく、当事者の同意という手続的要素があっても同一性の範囲という構造的要件を補完できないとする点で、答案上、訴因変更の可否を厳格に検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)2057 / 裁判年月日: 昭和24年5月24日 / 結論: 棄却
一 賍物故買罪の判示としては、盜品を盜品と知りながら買受けた事實を證據により確定して判示すれば足り、何人が誰からその物を盜み取つたかの事實を判示する必要もなく、又その證據説示をする必要もない。(昭和二三年(れ)第六六五號、同年一〇月三〇最高裁判所第二小法廷判決参照) 二 憲法第三八條第三項は、一被告人の自白を裏付ける補…