不告不理の原則と窃盗本犯の起訴されていない窃盗罪の賍物故買犯処罰
憲法31条
判旨
本犯が起訴されていない余罪であっても、当該余罪に係る贓物の譲受け等を行えば、盗品等関与罪が成立する。これは刑事訴訟法上の不告不理の原則に反するものではなく、憲法31条にも違反しない。
問題の所在(論点)
盗品等関与罪において、本犯の罪が起訴されていない場合に当該事実を前提として被告人を処罰することは、不告不理の原則および憲法31条に違反するか。
規範
盗品等関与罪(刑法256条)の成立には、前提となる本犯の罪が客観的に成立していることを要するが、当該本犯が公訴提起されていること(起訴の有無)は要件ではない。不告不理の原則(刑事訴訟法)は、検察官が公訴を提起した範囲についてのみ裁判所が審判できるという原則であり、起訴されていない犯罪事実を前提事実として認定し、被告人の罪を処罰することは同原則に抵触しない。
重要事実
被告人は、窃盗本犯である人物が実行した窃盗事件のうち、まだ起訴されていない余罪に係る盗品であることを知りながら、これを買い受けた(故買)。弁護人は、起訴されていない余罪に係る贓物を故買したとして被告人を処罰することは、不告不理の原則に反し、憲法31条の適正手続にも違反すると主張して上告した。
あてはめ
盗品等関与罪は、本犯により領得された財物の占有を維持・助長する行為を処罰するものである。本件において、被告人が買い受けた物品は、窃盗本犯が実行した客観的な窃盗罪(余罪)によって得られた贓物であると認められる。不告不理の原則は被告人自身の処罰範囲を画定するものであり、犯罪を構成する前提事実としての他人の犯罪(本犯)が起訴されていることまでを要求するものではない。したがって、未起訴の余罪を本犯とする盗品等関与罪の成立を認めても、適法な手続に反するとはいえない。
結論
本件上告を棄却する。起訴されていない余罪に係る贓物を譲り受けた被告人を処罰することは、不告不理の原則に反せず、憲法31条違反にも当たらない。
実務上の射程
本犯が不明な場合や不起訴・無罪(責任無能力等)の場合でも、客観的な財産犯の存在が証明されれば盗品等関与罪が成立し得るという「本犯との関係」における判例法理を確認するもの。実務上、併合罪となるべき本犯の特定は必要だが、その起訴までは不要であることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和27(あ)6144 / 裁判年月日: 昭和28年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等の売買(旧賍物故買罪)の成否に関し、被告人が盗品であることを認識して買い受けた事案において、原判決の罪名擬律を正当とし、量刑不当等の上告理由を排斥した。 第1 事案の概要:被告人は、第一審が判示した特定の事実に基づき、盗品であることを知りながらこれを買い受けたとして、賍物故買罪の罪に問われた…