職権により記録を調査するに、本件公判請求書(記録三四丁)によれば、被告人に対する公訴事実として「司法警察官意見書記載の犯罪事実、但(3)の事実を除く」と記載しあるところ、第一審においては右公判請求書において除外し起訴しなかつた右司法警察官の意見書記載の(3)の事実に対しても審判をなしたる上、有罪の認定をしており、そして原審においては第一審判決を引用して、その判示にかかる犯罪事実の全部を認定して処断しているのであるか、右は審判の請求を受けない事実について、裁判をした違法があるものといわねばならない。そして右の違法は判決に影響を及ぼすもので且つそれが著しく正義に反し刑訴四一一条に該当するものである。
審判の請求を受けない事実につき判決した違法と刑訴法第四一一条
旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号,刑訴法411条
判旨
裁判所が検察官の起訴していない事実について審判を行い有罪を認定することは、不告不理の原則に反し、審判の請求を受けない事実について裁判をした違法(刑事訴訟法378条11号参照)に該当する。
問題の所在(論点)
検察官が公訴事実から明示的に除外した事実について、裁判所が審判を行い有罪を認定することは許されるか。不告不理の原則および「審判の請求を受けない事実について裁判をした」違法の成否が問題となる。
規範
刑事裁判における審判の対象は、検察官が公訴提起により特定した公訴事実に限定される。検察官が公訴請求書において明示的に除外した事実は審判の対象に含まれず、これについて有罪判決を下すことは、審判の請求を受けない事実について裁判をした違法を構成し、著しく正義に反するものとして破棄事由となる。
重要事実
検察官は被告人を公訴提起する際、公判請求書において「司法警察官意見書記載の犯罪事実、但(3)の事実を除く」と記載し、特定の事実(盗品等有償譲受の事実)を明示的に起訴対象から除外した。しかし、第一審裁判所は、この除外された事実についても審判を行い、有罪の認定をした。原審(控訴審)も第一審判決を引用して、当該事実を含む犯罪事実の全部を認定して処断した。
あてはめ
本件公判請求書の記載によれば、検察官は司法警察官意見書記載の(3)の事実をあえて除外して公訴を提起している。それにもかかわらず、第一審および原審がこの除外された事実についてまで有罪認定を行ったことは、検察官の請求の範囲を逸脱した審判であるといえる。これは不告不理の原則に抵触し、審判の請求を受けていない事実について判決を下した違法があるものと解される。このような手続上の重大な違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであり、著しく正義に反する。
結論
検察官が起訴しなかった事実を裁判の基礎とすることはできない。原判決を破棄し、起訴された事実のみに基づき被告人を処断する。
実務上の射程
刑事訴訟における「審判の対象」が検察官の指定した事実に限定されること(不告不理の原則)を確認する基本的判例である。答案上では、裁判所が訴因外の事実を認定した場合や、訴因変更手続を経ずに異なる事実を認定した際の違法性を論じる文脈で、刑事訴訟法378条11号(絶対的控訴理由)の解釈として引用すべき事案である。
事件番号: 昭和25(れ)1819 / 裁判年月日: 昭和26年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所は、第一審判決に示された事実および証拠を引用することができ、これを行った判決に証拠理由の説示を欠く違法はない。 第1 事案の概要:被告人が贓物(盗品等)罪に問われた事案において、控訴審判決が、第一審判決に示された事実および証拠を引用する形で判決を下した。これに対し弁護人は、控訴審判決自体…