判旨
逮捕手続に違法があったとしても、そのことのみをもって直ちに当該事件の有罪判決を違法とする理由にはならない。
問題の所在(論点)
逮捕手続に違法が存在する場合に、そのことのみを理由として有罪判決を違法とすることができるか(逮捕手続の違法と判決の効力)。
規範
逮捕手続の適法性と、その後の公判審理の結果に基づく判決の適法性は別異の論点である。したがって、逮捕手続に何らかの違法が存在する場合であっても、その違法が証拠の収集過程に重大な悪影響を及ぼし証拠能力を否定させる等の特段の事情がない限り、手続違法のみをもって直ちに判決自体の違法事由(破棄理由)となるものではない。
重要事実
被告人は、盗品である自転車1台を、盗品であることを知りながら買い受けた(盗品等有償譲受罪)。第一審および原審はこれらの事実を認定して有罪としたが、弁護人は上告審において、逮捕手続に違法があったことを理由に判決の違法を主張した。
あてはめ
本件において、被告人は自転車の盗品等有償譲受の事実について証拠に基づき適法に認定されている。弁護人が主張する逮捕手続の違法については、仮にそのような事実があったとしても、それ自体が当然に判決の結果に影響を及ぼす法令違反を構成するものではない。また、記録を精査しても、手続の違法が判決の正当性を著しく損なうような事態(刑訴法411条の適用が必要な事態)は認められない。
結論
逮捕手続の違法は直ちに判決の違法を招くものではないため、上告は棄却される。
実務上の射程
捜査段階の手続違法を公判で争う際、単に手続が違法であったと主張するだけでは足りないことを示す判例である。違法収集証拠排除法則等の枠組みを用い、いかにその違法が有罪認定の根拠(証拠の許容性)や公訴提起の有効性に影響を及ぼすかを論じる必要がある。
事件番号: 昭和26(れ)207 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 破棄自判
職権により記録を調査するに、本件公判請求書(記録三四丁)によれば、被告人に対する公訴事実として「司法警察官意見書記載の犯罪事実、但(3)の事実を除く」と記載しあるところ、第一審においては右公判請求書において除外し起訴しなかつた右司法警察官の意見書記載の(3)の事実に対しても審判をなしたる上、有罪の認定をしており、そして…