判旨
裁判所が複数の証拠のうち、公判廷での供述よりも捜査段階での聴取書等を採用して事実認定を行うことは、裁判所の合理的な裁量の範囲内であり、自由心証主義に反しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、裁判所が公判廷での証人供述を排斥し、捜査段階の聴取書に基づいて事実認定を行うことは、証拠裁量の逸脱として違法となるか。
規範
刑事訴訟法上、証拠の証明力の評価は裁判所の合理的な裁量に委ねられている(自由心証主義)。複数の証拠間に矛盾がある場合、どの証拠を信じ、どの証拠を排斥するかは、経験則に反しない限り、裁判所の専権に属する。
重要事実
被告人は、盗品(賍物)であるとの事情を知りながら自転車を買い受けたとして賍物牙保罪等で起訴された。第一審の公判廷において、証人Aらは被告人に有利な供述をしたが、原審(控訴審)は、これら公判廷での供述を排斥し、捜査段階で作成されたAの聴取書等の書証を採用して、被告人に盗品の情の認識があったと認定した。
あてはめ
原審は、証人Aらの公判廷における供述記載を採用せず、一方で捜査段階の聴取書等の書証を採用している。このような証拠の取捨選択は、裁判所の裁量権の範囲内で行われた適法な措置であるといえる。本件の各証拠に照らせば、被告人が盗品であるとの情を知って自転車を買い受けたという認定は容易に肯定でき、その判断過程に経験則に反するような違法は認められない。
結論
原審の事実認定は適法であり、証拠裁量の逸脱はない。したがって、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
自由心証主義(刑訴法318条)の原則を確認する事例である。公判中心主義との関係で、公判廷供述よりも書面を重視した認定が争点となる際、裁量権の逸脱がないことを論証する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4717 / 裁判年月日: 昭和29年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証人の供述が伝聞証拠に該当するか否かは、その供述内容の真実性を問題とするか否かによって決せられる。本件では、証人の供述が伝聞証言に当たらないとした原判決の判断に訴訟法上の違法はない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において、原判決が証人Aの伝聞証言を不当に証拠として採用したと主張し、福岡高等裁…