一 賍物故買罪の判示としては、盜品を盜品と知りながら買受けた事實を證據により確定して判示すれば足り、何人が誰からその物を盜み取つたかの事實を判示する必要もなく、又その證據説示をする必要もない。(昭和二三年(れ)第六六五號、同年一〇月三〇最高裁判所第二小法廷判決参照) 二 憲法第三八條第三項は、一被告人の自白を裏付ける補強證據が犯罪事實の全部に亘つて存在することを要求するのではなくて、自白にかゝる事實の眞實性を保障し得る證據が他にあれば、右の規定に違反するものでないこと、當裁判所がしばしば判例に於て示している通りである。(昭和二二年(れ)第一五三號、同二三年六月九日大法廷判決参照)
一 賍物故買罪につき窃盜の事實を明示することの要否 二 被告人の自白に對する一部補強と憲法第三八條第三項
舊刑訴法360條1項,刑法256條,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
贓物故買罪(現・盗品等有償譲受罪)の成立には、対象が盗品であることの確定で足り、犯人や被害の態様まで特定する必要はない。また、自白の補強証拠は、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足り、犯罪事実の全部にわたる必要はない。
問題の所在(論点)
1. 盗品等関与罪の成立において、本犯(窃盗等)の犯人や日時・場所等の詳細を特定する必要があるか。 2. 主観的構成要件(盗品の情を知っていたこと)について、自白以外の補強証拠がどの程度必要とされるか。
規範
1. 盗品等関与罪における客体の認定:対象物が盗品であることを確定すれば足り、何人が誰から盗み取ったかという窃盗の具体的態様(犯人・被害者等)まで判示・証拠説明する必要はない。 2. 自白の補強法則(憲法38条3項):自白の補強証拠は、犯罪事実の全部に亘って存在することを要せず、自白にかかる事実の真実性を保障し得る証拠が別に存在すれば足りる。
重要事実
被告人は、リヤカー用油48本が盗品であるとの情を知りながらこれを買い受けたとして、贓物故買罪(現・刑法256条2項)で起訴された。原判決は、本件リヤカー用油が盗品であること及び被告人の悪意を認定したが、具体的な窃盗犯の氏名や被害者については特定しなかった。また、被告人の「盗品であると知っていた」という主観的態様に関する直接証拠は司法警察官作成の供述録取書(自白)のみであったが、裁判所は被告人の公判廷供述や共犯者の供述を総合して有罪を認めたため、被告人側が理由不備および補強法則違反を理由に上告した。
あてはめ
1. 客体の特定について:原判決は「リヤカー用油が盗品であること」及び「被告人がその情を知って買い受けたこと」を証拠に基づき確定している。本罪の保護法益は追求権の侵害にあり、対象が盗品であることさえ確定できれば、犯人等の特定は不可欠ではない。 2. 補強証拠について:被告人の自白以外に、原審における公判廷供述や、相被告人の司法警察官に対する供述が存在する。これらは自白の内容が真実であることを十分に保障する証拠といえるため、憲法38条3項の要求する補強証拠として十分である。
結論
本犯の具体的態様の特定は不要であり、また自白の真実性を保障する証拠が存する以上、補強法則の違反も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
1. 実務上、盗品等関与罪における本犯の特定は「盗品性」が認められる限度で緩和されており、起訴状や判決における特定レベルの基準として引用される。 2. 補強法則に関する「真実性保障説」のリーディングケースの一つであり、主観的要素(故意)の認定において、間接的な状況証拠や公判廷供述が補強証拠となり得ることを示す。
事件番号: 昭和24(れ)1161 / 裁判年月日: 昭和24年12月3日 / 結論: 棄却
賍物故買罪は買主が賍品たることを知りながらこれを有償取得することによつて成立するのであるから、法律上の賣主が誰であるかを明確にする必要はないのである。原判決によると被告人は賍物であることの情を知りながら米三俵を一萬五千圓で下買受けた事實が確定されているのであるから賍物故買罪の成立することは明かであつて、その法律上の賣主…