一 元來刑法が賍物に關する行爲を犯罪として處罰するのは、その行爲がその物に對する被害者の權利の實行の不能ならしめるか或は困難ならしめる爲めであるから、現實に賍物の移轉のある際に賍物たるの情を知つて居れば賍物罪は成立するものといわなければならない。大審院も右に述べたと同様の判例を示して居り、今之を改める必要は認められない(昭和六年(れ)第一一四九號同六年一一月九日大審院判決参照) 二 本件記録を精査するに被告人等に對する公判請求書に公訴事實として「司法警察官意見書記載の犯罪事實」と記載されているに拘わらず、右引用にかかる司法警察官の意見書なるものは存在しないことは所論の通りである。しかし第一審公判調書を調べて見るに、立會検事は司法警察官事件送致記載の犯罪事實に基いて被告人を訊問していることを認め得るし、右事件送致書は本件記録中に現存している點に鑑みれば、公判請求書に司法警察官意見書とあるは司法警察官事件送致書の誤記であることを認め得るものである。そして被告人等に對する右事件送致書中には明らかに被告人等の犯した犯罪事實の記載があるから、所論のように公訴手屬は無効であるとはいい得ない。
一 賍物に關する行爲を犯罪として處罰することの異義と同罪の成立 二 公判請求書に司法警察官意見書との記載が同事件送致書の誤記である場合と公訴の適否
刑法256條1項,舊刑訴法72條,291條
判旨
盗品等罪(旧贓物罪)の処罰根拠は、本犯の被害者が追及権を行使することを困難にする点にあるため、贓物の現実の移転時(受領時)に盗品であるとの情を知っていれば、事後の幇助ではなく本罪が成立する。
問題の所在(論点)
贓物罪(現在の盗品等罪)の成立に必要な「情を知って」いた(故意)の判断基準時はいつか。特に、取引成立後であっても、現実の占有移転時(受領時)に認識があれば本罪が成立するか。
規範
刑法が盗品等(贓物)に関する行為を処罰するのは、その行為によって被害者の権利実行(追及権の行使)を不能または困難にするためである。したがって、現実の贓物の移転がある際に、それが贓物であることの情を知っていれば、盗品等罪が成立する。
重要事実
被告人Aは、共犯者らと共謀して人造バターを買い受けた。売買契約等の取引時点では、Aは当該物品が会社の払い下げ品であると誤認していたが、その後、実際に物品をトラックに積み込んで運搬を開始する際、共犯者から「うるさい品物(盗品の意味)」であるとの告げを受け、贓物であるとの認識を持った。弁護人は、認識を得たのが取引後であるため事後の幇助にすぎないと主張した。
あてはめ
本件において、被告人Aは当初は正当な品物であると信じていたが、トラックへの積み込みという現実の物品の移転・受領の場面において、共犯者の言動から本件物品が「うるさい品物」すなわち贓物であることを認識したと認められる。贓物罪の保護法益は被害者の追及権の保護にあるところ、現実の移転時に認識がある以上、その受領行為によって被害者の追及は客観的に困難となる。ゆえに、この時点での認識は贓物罪の故意として十分である。
結論
贓物故買罪(現在の盗品等有償譲受け罪)の共同正犯が成立する。現実の受領時に贓物であるとの情を知っていれば、事後の幇助にとどまらず、本罪が成立する。
実務上の射程
盗品等罪(刑法256条)の故意の具備時期を判断する際の重要判例である。契約時(合意時)に善意であっても、その後の引渡し・受領時に悪意となれば、有償譲受け罪や譲受け罪が成立することを示す。答案上は、本罪の処罰根拠(追求権の困難化)から、現実の移転時を基準とする論理を展開する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)2057 / 裁判年月日: 昭和24年5月24日 / 結論: 棄却
一 賍物故買罪の判示としては、盜品を盜品と知りながら買受けた事實を證據により確定して判示すれば足り、何人が誰からその物を盜み取つたかの事實を判示する必要もなく、又その證據説示をする必要もない。(昭和二三年(れ)第六六五號、同年一〇月三〇最高裁判所第二小法廷判決参照) 二 憲法第三八條第三項は、一被告人の自白を裏付ける補…