賍物四点の売却を依頼されて甲地より乙地にこれを運搬し、うち二点の売却を了したが他は売却するにいたらなかつた行為は、賍物運搬牙保罪の包括一罪として処罰すべきである。
賍物牙保の目的で賍物を運搬しその一部を牙保するにとどまつた場合の罪数
刑法256条2項
判旨
盗品等の運搬行為とその後の牙保(有償の媒介)行為が、同一の目的物について一連の経緯で行われた場合には、これらを包括的に観察して盗品等運搬・牙保罪の包括一罪として処断すべきである。
問題の所在(論点)
盗品であるとの情を知って目的物を運搬した後に、同一の目的物について牙保(処分の仲介)を行った場合、盗品等運搬罪と盗品等牙保罪の罪数関係はどのようになるか。
規範
刑法256条2項に規定される各行為(運搬、牙保等)は、盗品の追求を困難にするという同一の保護法益を侵害するものである。したがって、同一の盗品について運搬行為に引き続き牙保行為が行われた場合、それらの行為が時間的・場所的に近接し、かつ一連の犯意に基づくなど包括的に観察できるときは、刑法上の評価として包括一罪を構成する。
重要事実
被告人は、AおよびBから映写機4台の売却を依頼された。これらがいずれも盗品であるとの情を知りながら、共犯者らと共謀の上、直ちに当該映写機を鳥取市内から特定の場所まで運搬した。その後、同場所において、運搬した4台のうち2台をDに売却させる牙保行為を完了したが、残り2台については売却の周旋が成立しなかった。
あてはめ
被告人は、売却依頼を受けた盗品(映写機)を直ちに目的地まで「運搬」し、その到着後ただちに同目的物の一部について売却を媒介する「牙保」行為に及んでいる。このように、運搬と牙保が同一の目的物に対して一連の流通過程において行われている実態に鑑みれば、個別の行為ごとに独立した罪を構成すると見るのではなく、全体を包括的に観察するのが相当である。
結論
被告人の行為は盗品運搬牙保罪の包括一罪として処断されるべきであり、運搬罪と牙保罪の二罪が成立するとした原判決の判断は刑法256条2項の解釈を誤ったものである。
実務上の射程
盗品等関与罪における各行為態様(領得、運搬、寄蔵、牙保等)が重畳的に行われた場合の罪数処理において、包括一罪説を採る有力な根拠となる。実務上は、犯意の連続性や目的物の同一性、時間的・場所的近接性を検討し、併合罪ではなく一罪として起訴・処断すべき場面を画定する際に活用する。
事件番号: 昭和26(れ)2432 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品を買い受ける目的で、当該盗品を自ら運搬した行為について、盗品等運搬罪(刑法256条2項)の成立を認めた原判決を維持した。 第1 事案の概要:被告人Aは、被告人Bから盗品を買い受けるために、当該盗品を自ら運搬した。弁護人は、買受けの手段として行われた運搬は独立した運搬罪を構成しない旨を主張して上…
事件番号: 昭和29(あ)12 / 裁判年月日: 昭和30年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の犯罪行為が刑法上の包括一罪と認められるためには、犯行の日時・場所の近接性のみならず、それらが単一の意思の発動により行われたものであることを要する。 第1 事案の概要:被告人は、第一審判決判示第四及び第五の各事実(具体的な罪名は判決文からは不明)に示された複数の犯行に及んだ。これらの犯行は、日…