原判決は、被告人に對する檢事の聽取書中の同人の供述記載の中、判示第一の二の乗用自動車に關する部分を省略して摘示しているのであるが、判示第一の一のダツトサンの賣却周旋の事實と、第一の二の乗用自動車の運搬の事實とは別個獨立の事實であつて、而も右檢事の聽取書に依れば、被告人はこの兩者の場合とも、Aは眞夜中に車を持つてきたり、車のある所へ被告人を連れていつたりして而も賣主の名前も云わず、賣値も云わなかつたのであるから被告人としては怪しい物である事を感ずかねばならぬ筋合で、殊にダツトサンの場合は車の前の碍子に、判示の組合の名が書いてあることをAが車を持つてきた折氣付いたので、それが同人の物でないことは判つていたというのであるから、原判決が右被告人の檢事に對する供述記載の中判示第一の二に關する部分を省略して摘録しても證據の趣旨に反して被告人の供述記載を引用したとの非難は當らない。そうして又右の「怪しい物である事を感ずかねばならぬ筋合であります」とある部分は必ずしも他人の想像を述べた趣旨のものと解すべき理由はなく、被告人も感ずいて居たという意味をふくむものと解し得るからこの點の論旨も理由がない。
賍物罪における知情の認定と證據法則
刑法38條1項,刑法256條,舊刑訴法336條,舊刑訴法337條
判旨
盗品等の売却周旋において、単に依頼を伝達するにとどまらず自らも高価売却を依頼した場合は牙保罪を構成し、また、盗品等の運搬において助手席に同乗して協力・加功した場合は運搬罪の共同正犯が成立する。
問題の所在(論点)
1. 被告人がAの依頼をBに伝えた行為が、盗品等牙保罪の「周旋」に該当するか。 2. 実行行為者と共謀した者が、売却斡旋の行為に直接関与しなかった場合でも刑事責任を負うか。 3. 自ら運転せず、助手席に同乗して運搬を補助した行為が盗品等運搬罪を構成するか。
規範
1. 盗品等牙保罪(刑法256条2項)の「周旋」とは、盗品等の売買等の法律行為を媒介する行為をいう。単なる意思表示の機械的な伝達を超え、自ら媒介の意思をもって働きかけた場合はこれに該当する。 2. 盗品等運搬罪(同項)において、自ら運転せずとも、犯人の運搬行為を承諾した上で助手席に同乗し、運搬に協力・加功した場合には、運搬の共同正犯としての責任を負う。 3. 盗品等の罪の主観的要件として、確実な認識は不要であり、盗品等であることの未必的な認識があれば足りる。
事件番号: 昭和29(あ)3831 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
賍物四点の売却を依頼されて甲地より乙地にこれを運搬し、うち二点の売却を了したが他は売却するにいたらなかつた行為は、賍物運搬牙保罪の包括一罪として処罰すべきである。
重要事実
被告人は、Aが盗んできた自動車の売却を依頼され、盗品であると知りながらこれを承諾した。被告人はBを呼び寄せ、Bに対して当該車両を「なるたけ高価に売却してくれるように」とさらに依頼し、Bと共謀の上で第三者へ売却する周旋行為を行った。また、別の盗難自動車についても、Aから運搬を依頼されて承諾し、Aが運転する車両の助手席に乗り込んで運搬に協力・加功した。被告人は、Aが深夜に車を持参することや売主・売値を明かさないこと、車体に従前の所有者を示す記載があること等から、盗品である可能性を認識していた。
あてはめ
1. 被告人は、Aの依頼をBに機械的に伝達したにすぎないのではなく、Bに対し「なるたけ高価に売却してほしい」と自ら重ねて依頼していることから、売買を媒介する「周旋」行為に該当する。 2. 被告人はBと共謀しており、たとえBが売却斡旋の実務を遂行したとしても、共謀者である被告人はその責任を免れない(一部実行全部責任)。 3. 運搬についても、Aの依頼を承諾して助手席に乗り込み、Aの運搬行為に協力・加功しているため、Aと共に「運搬」したものと認められる。 4. 深夜の授受や車両の記載等の客観的事実から、被告人は「怪しい物であること」を感付いていたと認められ、盗品等の情を知っていた(未必の故意)といえる。
結論
被告人の行為は盗品等牙保罪および盗品等運搬罪を構成し、原判決の有罪判断は正当である。
実務上の射程
牙保罪の「周旋」の定義や、運搬罪における「同乗」による加功の評価を示す重要判例である。また、贓物罪の故意について、確定的な認識までは不要とする実務上の準拠枠組みを提供している。答案上は、媒介への積極的関与の有無や、同乗による心理的・物理的助力の有無を検討する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和26(れ)2432 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品を買い受ける目的で、当該盗品を自ら運搬した行為について、盗品等運搬罪(刑法256条2項)の成立を認めた原判決を維持した。 第1 事案の概要:被告人Aは、被告人Bから盗品を買い受けるために、当該盗品を自ら運搬した。弁護人は、買受けの手段として行われた運搬は独立した運搬罪を構成しない旨を主張して上…