既遂後の窃盗犯人と共同して賍物を運搬した者は、本犯が賍物罪に問われなくても、賍物運搬罪の責を免れない。
既遂後の窃盗犯人と共同して賍物を運搬した者の罪責。
刑法256条2項,刑法60条
判旨
窃盗本犯と共同して盗品を運搬した者は、たとえ本犯自身に盗品関与罪が成立しない場合であっても、盗品運搬罪の罪責を負う。本犯の不可罰的事後行為という性質は、協力者である第三者の犯罪成立を妨げるものではない。
問題の所在(論点)
窃盗の本犯が盗品を運搬する場合、その本犯自身には盗品運搬罪は成立しない(不可罰的事後行為)。このとき、本犯による運搬行為に協力した第三者について、盗品運搬罪(刑法256条2項)が成立するか。
規範
盗品運搬罪(刑法256条2項)を含む盗品等関与罪は、本犯が不法に領得した財産の状態を維持・助長する行為を処罰するものである。本犯自身が盗品を運搬する行為は窃盗罪の不可罰的事後行為として処罰されないが、本犯に協力して運搬した第三者については、盗品であることの情を知りつつ運搬に関与した以上、独立して盗品運搬罪が成立する。
重要事実
米兵らが米軍倉庫から窃取した盗品(賍物)を、売却に便宜な東京都内へ運搬する際、被告人はその事情を知りながら米兵らの依頼を受け、協力して自動車により横須賀市から東京都台東区まで運搬した。被告人は、本犯である米兵らに盗品運搬罪が成立しない以上、協力者である自身にも同罪は成立しない旨を主張して争った。
あてはめ
被告人は、米兵らが窃取した物品であることを知りながら(情を知って)、その売却を容易にする目的で運搬を助けている。本犯である米兵ら自身が運搬行為について盗品運搬罪で問擬されないのは、窃盗罪の評価に含まれるとされるためであり、運搬行為自体の違法性が否定されるわけではない。したがって、本犯に協力して積極的に領得状態を維持・助長した被告人の行為は、盗品運搬罪の構成要件を充足し、本犯の処罰可能性とは無関係に同罪を構成すると評価される。
結論
被告人に盗品運搬罪が成立する。本犯に同罪が成立しないことは、協力者の罪責に影響を及ぼさない。
実務上の射程
本犯による事後行為の不可罰性が第三者に及ばないことを示した重要判例である。答案上は、盗品等関与罪の保護法益(追求権説・違法状態維持説)を念頭に、本犯の不可罰性は個人的処罰阻却事由に近い性質であることを示唆しつつ、第三者の処罰を肯定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1580 / 裁判年月日: 昭和27年7月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】盗品等運搬罪は、被害者のためではなく犯人の利益のために領得を継受して盗品の所在を移転させ、被害者による回復を困難にさせた場合に成立する。 第1 事案の概要:被告人Bは、共犯者Aとともに、窃盗の被害品である盗品を運搬した。原審は、この運搬行為が被害者のためになされたものではなく、窃盗犯人の利益のため…
事件番号: 昭和26(れ)2432 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品を買い受ける目的で、当該盗品を自ら運搬した行為について、盗品等運搬罪(刑法256条2項)の成立を認めた原判決を維持した。 第1 事案の概要:被告人Aは、被告人Bから盗品を買い受けるために、当該盗品を自ら運搬した。弁護人は、買受けの手段として行われた運搬は独立した運搬罪を構成しない旨を主張して上…