一 賍品を場所的に移転して、被害者の同品に対する権利の実行を困難ならしめた以上、これを運んだ距離にさほど遠くないものがあつても、賍物運搬罪は成立する。 二 第一審公判における検察官側の証人甲の証言中に、乙の供述を内容とするいわゆる伝聞部分があつても、同証言に際し被告人側から異議の申立があつた形跡がないばかりでなく、乙はすでに当時の記憶を全く喪失しており、第二審の際は所在不明となつていることが窺われるときは、第一審公判調書中の右の伝聞証言を証拠とすることができる。
一 賍物運搬罪の成立する事例。 二 伝聞証言に証拠能力の認められる事例。
刑法256条2項,刑訴法394条,刑訴法326条,刑訴法324条2項,刑訴法321条1項3号
判旨
盗品であることの情を知りながら、短距離であっても盗品を運んで隠匿に加功し、被害者の追求権の行使を困難にさせた場合は、贓物運搬罪(刑法256条2項)が成立する。
問題の所在(論点)
贓物運搬罪(刑法256条2項)における「運搬」の意義、および短距離の場所的移転が同罪の成立を左右するか。
規範
贓物(盗品等)の運搬とは、盗品等の場所的移転を伴う行為を指す。たとえ運搬距離が短くとも、当該行為によって盗品等の隠匿に加功し、被害者の盗品等に対する権利の実行(追求権の行使)を困難にするものであれば、贓物運搬罪が成立する。
重要事実
被告人は、他者が窃取してきた衣類等が入った風呂敷包二個が贓物(盗品)であることの情を知りながら、依頼を受けて、特定の場所附近から自己の居住する宅内の押入までの間、これを運んだ。弁護側は、運搬された距離が極めて短いことを理由に、贓物運搬罪の成立を否定すべきであると主張した。
あてはめ
本件において被告人は、盗品であることを認識した上で、風呂敷包を近隣から自宅押入まで運んでいる。この行為は盗品の場所的移転を伴うものである。たとえその運んだ距離がさほど遠くないものであったとしても、本件の運搬行為は、客観的に盗品の隠匿に加功する性質を有している。その結果、被害者が盗品を取り戻すなどの権利行使を困難ならしめたといえる。
結論
短距離の運搬であっても、隠匿に加功し被害者の追求権を困難にする実質がある以上、贓物運搬罪の成立を肯定すべきである。
実務上の射程
本判決は贓物罪の本質である追求権説の立場を前提としている。答案上では、移転距離の長短よりも、その行為が被害者の追求をいかに困難にしたかという「追求権侵害の危険性」に力点を置いて検討すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)3382 / 裁判年月日: 昭和30年7月12日 / 結論: 棄却
窃盗犯人と共同してその盗賍品たる銅線三四把を分担して各別に運搬した場合、その銅線全部について賍物運搬罪が成立する。