判旨
贓物寄蔵罪(刑法256条2項)の成立には、寄蔵の対象となった物品が他人の犯行により領得されたものであることの認識は必要だが、犯人の氏名や犯行の具体的態様までを認識・特定する必要はない。
問題の所在(論点)
贓物寄蔵罪の成立において、寄蔵の対象物が贓物であることの認識として、本犯(領得罪の犯人)の氏名や犯行の具体的態様を特定・認識している必要があるか。
規範
贓物罪(盗品等関与罪)の成立要件として、当該物品が「贓物」(盗品等)であることの認識(未必的認識を含む)は必要であるが、その物品がいつ、誰によって、どのような犯罪(窃盗、強盗等)で領得されたかという具体的・詳細な事実までを明らかにする必要はない。
重要事実
被告人は、風呂敷に包まれた衣類が「朝鮮人A某がどこかで悪いことをしてきた品物ではないか」と感じながら、これを受け取って保管し、さらにその一部を荷造りして発送するために駅まで運ばせたり、隣家に預けたりした。被告人はA某らの氏名や住所を明確には知らなかったが、物品が盗難被害に遭ったものであることは被害始末書等により客観的に明白であった。
あてはめ
被告人は、物品を受け取る際に「悪いことをしてきた品物」であるとの認識を有しており、これは物品が財産罪によって不法に領得されたものであることを抽象的に認識していたといえる。被害始末書等から物品が他人の盗まれたものであることが明白である以上、被告人が預かった物品が贓物であるという客観的事実および主観的認識は充足される。本犯(A某ら)の具体的な素性や犯行内容が不明であっても、罪の成立を妨げるものではない。
結論
贓物寄蔵罪が成立する。具体的犯行の態様や犯人の特定がなされていなくても、贓物であることの認識があれば足りる。
実務上の射程
盗品等関与罪における「故意」の程度を画定する判例である。答案上では、被告人が盗品である可能性を認識(未必の故意)していれば、本犯の特定や罪名の特定(窃盗か強盗か等)まで不要であることを示す根拠として活用する。事案において本犯が不明な場合や、被告人が「出所が怪しい」程度の認識しか持っていない場合の論証に親和性が高い。
事件番号: 昭和25(れ)1608 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】贓物罪(現在の盗品等関与罪)の成立に必要な贓物の情を知っていたこと(知情)の認定は、行為当時の認識を基準とすべきであり、事後の推測に基づく供述のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、元海軍将兵らが終戦物資を権限なく勝手に領得した贓物であることを知りながらこれらを収受したとして、贓物収受罪で…