判旨
贓物罪(現在の盗品等関与罪)の成立に必要な贓物の情を知っていたこと(知情)の認定は、行為当時の認識を基準とすべきであり、事後の推測に基づく供述のみでは足りない。
問題の所在(論点)
贓物罪における「知情」の認定において、犯行後の時点における「今から考えれば贓物であったと思われる」という内容の供述によって、犯行当時の認識を認定できるか。
規範
贓物罪の主観的構成要件である「知情」の認定には、犯行当時において、当該物品が贓物であることの情を知っていたことを要する。事後的な内省や現在の法的観点からの推測に基づく供述は、行為当時の認識を直接証明する証拠とはなり得ない。
重要事実
被告人は、元海軍将兵らが終戦物資を権限なく勝手に領得した贓物であることを知りながらこれらを収受したとして、贓物収受罪で起訴された。原審は、被告人が公判において「今から考えれば払下げはできなかったと思われる」「今考えると、勝手に軍の物資をくれたわけである」旨を供述したことを根拠に、行為当時の知情を認定して有罪とした。
あてはめ
被告人の供述は、終戦直後の混乱期における受領行為を、後日の落ち着いた時点から振り返って評価した主観的な推測にすぎない。このような「今から考えれば」という形式の供述は、犯行当時の具体的な認識を物語るものではなく、当時の混乱した状況(深い考えもなく受け取った事実)を裏付けることはあっても、知情を認めるに足りる証拠とはいえない。したがって、他に客観的証拠がない限り、知情の認定には合理的な疑いが残る。
結論
被告人が犯行当時その贓物たるの情を知っていたことを認めるべき証拠がなく、原判決の認定は違法であるため、有罪部分は破棄を免れない。
実務上の射程
故意の認定における「行為時」と「裁判時」の峻別を求める射程を持つ。特に、被告人が事後的に反省の弁を述べる中で「今思えば違法だった」といった趣旨の発言をした場合、それが直ちに行為時の故意(未必の故意を含む)を認める根拠にはならないことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(れ)1358 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判廷において、本件賍物につき知情の点も含め自白している場合、他の証拠と総合して犯罪事実を認定することは適法であり、証拠の取捨選択は裁判所の裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人が賍物罪(盗品等関与罪)に問われた事案において、第一審の公判廷で被告人および相被告人が供述を行った。被告人は原…