原判決の認定した事實は、A某、B某等が同判示のとおりC方で現金一三萬九六七〇圓を強取してから間もなく、被告人が、右A某の依頼により、強取した現金の一部である一萬七〇〇〇圓をその情を知り乍ら同人から受取つて、一足先にその住居地である下關市に歸つていた前記B某の許迄運搬して届けたという事実である。即ち他人の所有にかかる財物に關する犯罪であつて、財物を強取した事實とその財物を受取つて運搬したる事實とは互に緊密な關係がある、この事實は公判請求書記載の強盜の起訴事實の中に包含せられているものと解するのを相當とする。それ故原判決には、所論のように、審判の請求を受けない事件につき判決した違法は存しない。
財物を強取した旨の公訴事実に基きその財物を受取つて運搬した事実を認定することの可否
刑法256條2項,舊刑訴法291條
判旨
強盗の起訴事実には、その強取された財物を情を知って運搬したという盗品等運搬の事実が包含されていると解すべきであり、強盗罪で起訴された被告人を盗品等運搬罪で処断しても不告不理の原則に反しない。
問題の所在(論点)
強盗罪として起訴された事実に基づき、裁判所が盗品等運搬罪の成立を認めることは、訴因変更等の手続を要せず、不告不理の原則に反しないか。すなわち、強盗の起訴事実に盗品等運搬の事実が包含されているといえるかが問題となる。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法256条6項、312条1項)は、基本的事実関係が共通するか、または審判対象が起訴事実の中に包含されているかによって判断される。他人の所有物に関する犯罪において、基本となる財物奪取罪と、その後の当該財物の処置(運搬等)に関する罪は、事実関係において緊密な関係があり、後者は前者の起訴事実に包含されるものと解するのが相当である。
重要事実
AおよびBらは、C方から現金約14万円を強取した。被告人は、Aの依頼を受け、当該現金が強取されたものであるとの情を知りながら、その一部である1万7000円をBのもとへ運搬した。検察官は被告人を強盗罪の事実で公判請求したが、裁判所は盗品等運搬罪(旧:賍物運搬罪)の成立を認めて判決を下した。これに対し弁護人は、審判の請求を受けていない事件について判決した違法(不告不理原則違反)があるとして上告した。
あてはめ
本件において、Aらが現金を強取した事実と、被告人がその財物を情を知って受領・運搬した事実は、同一の財物を対象とする犯罪として互いに「緊密な関係」にある。このような密接な関連性がある場合、盗品等運搬の事実は、当初の公判請求書に記載された強盗の起訴事実の中に「包含せられている」ものと認められる。したがって、強盗罪の起訴の範囲内で盗品等運搬罪を認定することは、審判の請求を受けていない事件を裁いたことにはならない。
結論
被告人を盗品等運搬罪で処断した原判決に不告不理の違法はなく、強盗の起訴事実の中に包含される事実として適法に判示されたものといえる。上告棄却。
実務上の射程
訴因変更の要否や公訴事実の同一性を論じる際の基礎となる判例である。財物罪において、当初の罪名(強盗・窃盗等)と後の関与(盗品等関与罪)が「事実関係において緊密」であれば包含関係を認め、訴因変更なくして(あるいは同一性を認めて変更を許可して)処断できる根拠として引用できる。
事件番号: 昭和25(れ)217 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
論旨第二點は、被告人Aに對する起訴事實は窃盜であるのに、原判決が賍物運搬として斷罪したのは、不告不理の原則を破るものだ、というのである。しかし賍物運搬は窃盜の事後においてこれに便益を確保する犯罪であるから、窃盜罪の公訴事實中には賍物運搬罪の事實をも含むものと解すべく、罪名に變更があつても、起訴事實の同一性を害するもので…
事件番号: 昭和26(れ)2432 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品を買い受ける目的で、当該盗品を自ら運搬した行為について、盗品等運搬罪(刑法256条2項)の成立を認めた原判決を維持した。 第1 事案の概要:被告人Aは、被告人Bから盗品を買い受けるために、当該盗品を自ら運搬した。弁護人は、買受けの手段として行われた運搬は独立した運搬罪を構成しない旨を主張して上…