論旨第二點は、被告人Aに對する起訴事實は窃盜であるのに、原判決が賍物運搬として斷罪したのは、不告不理の原則を破るものだ、というのである。しかし賍物運搬は窃盜の事後においてこれに便益を確保する犯罪であるから、窃盜罪の公訴事實中には賍物運搬罪の事實をも含むものと解すべく、罪名に變更があつても、起訴事實の同一性を害するものでないこと、當裁判所の判例とするところであつて(昭和二四年(れ)第一七四五號同年九月八日第一小法廷判決)論旨は理由がない。
公訴事實が窃盜であるのに賍物運搬と認定した判決と事實の同一性
舊刑訴法291條,舊刑訴法410條18號,刑法235條,刑法256條2項
判旨
窃盗罪と贓物運搬罪(現行法の盗品等運搬罪)は、前者が後者を誘発する関係にあり、後者が前者の事後において便益を確保する犯罪であるため、公訴事実の同一性が認められる。
問題の所在(論点)
窃盗罪として起訴された事実に対し、裁判所が贓物運搬罪(盗品等運搬罪)を認定して処断することは、公訴事実の同一性の範囲内として許容されるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)は、訴因の変更が許される範囲を画定する概念であり、基本的事実関係が同一であれば認められる。窃盗罪と盗品関与罪(贓物罪)の間においては、窃盗の事後においてその利益を確保するという密接な関係があるため、罪名に変更があっても起訴事実の同一性は害されない。
重要事実
被告人Aは、当初「窃盗罪」として起訴された。しかし、原判決は被告人Aの事実について「贓物(盗品)運搬」の事実を認定し、贓物運搬罪として断罪した。これに対し弁護人は、起訴事実と異なる事実で処断することは不告不理の原則(訴因の拘束力)に反すると主張して上告した。
あてはめ
贓物運搬罪は、窃盗の事後において、当該窃盗犯に対して盗品保持の便益を確保する犯罪である。このような犯罪の性質に鑑みれば、窃盗罪の公訴事実の中には、その事後行為である贓物運搬罪の事実をも含んでいるものと解するのが相当である。したがって、被告人の行為を窃盗から贓物運搬に切り替えて認定しても、社会通念上の基礎となる事実に変わりはなく、起訴事実の同一性を逸脱するものではない。
結論
窃盗罪と贓物運搬罪(盗品等運搬罪)には公訴事実の同一性が認められるため、裁判所が訴因変更手続を経て(あるいは旧法下において)これらを認定することは適法である。
実務上の射程
窃盗罪と盗品関与罪の間の公訴事実の同一性を肯定した重要判例である。現行法下では、一方の訴因から他方の訴因への変更が可能であることを示す根拠として用いる。ただし、審判対象の画定や被告人の防御権の観点から、実際には訴因変更手続を要するのが通常である。
事件番号: 昭和26(あ)3398 / 裁判年月日: 昭和27年10月30日 / 結論: 棄却
「被告人IはKと共謀して昭和二五年一二月二日頃堺市a町b丁目)c番地jで自転車一台及び飴一瓶を窃取した。」との窃盗の訴因を「被告人Iは同日右j附近までKと同行し同人の依頼により賍品たる自転車等をその情を知りながら大阪市d区e町f丁目g番地附近まで運搬した。」との賍物運搬の訴因に変更することは差支えない。
事件番号: 昭和26(あ)1943 / 裁判年月日: 昭和27年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪と贓物牙保罪又は同寄蔵教唆罪との間には、公訴事実の同一性が認められるため、訴因の変更が可能である。公判開始後であっても、訴因の予備的追加又は変更は許容される。 第1 事案の概要:被告人が窃盗罪で起訴されたが、公判の過程で当該事件が盗品等関与罪(贓物牙保罪または贓物寄蔵教唆罪)に該当する可能性…