「被告人IはKと共謀して昭和二五年一二月二日頃堺市a町b丁目)c番地jで自転車一台及び飴一瓶を窃取した。」との窃盗の訴因を「被告人Iは同日右j附近までKと同行し同人の依頼により賍品たる自転車等をその情を知りながら大阪市d区e町f丁目g番地附近まで運搬した。」との賍物運搬の訴因に変更することは差支えない。
窃盗の訴因を賍物運搬の訴因に変更することが許される事例。
刑訴法312条
判旨
当初の窃盗の公訴事実から、被告人が窃盗犯人の依頼により盗品であることを知りつつ運搬したという贓物運搬の公訴事実への訴因変更は、出来事の推移に多少の異同があっても公訴事実の同一性を失わない。
問題の所在(論点)
窃盗の公訴事実から、盗品の情を知って運搬したという贓物運搬の公訴事実への変更は、刑事訴訟法312条1項の「公訴事実の同一性」の範囲内にあるといえるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)が認められるか否かは、基本的事実関係の同一性の有無によって判断される。具体的には、犯行の日時、場所、対象、方法等の出来事の推移において多少の異同があるにとどまり、社会通念上、単一の事実といえる関係にある場合には、公訴事実の同一性は失われない。
重要事実
被告人は、当初、共犯者Aと共謀して自転車1台及びアメ1瓶を窃取したという「窃盗」の公訴事実で起訴された。その後、検察官は「窃盗はA単独の犯行であるが、被告人はAの依頼により、盗品であることを知りながら犯行現場付近から別の場所まで当該自転車等を運搬した」という「贓物運搬」の訴因に変更した。被告人は第一審公判において、窃盗の共犯であることは否定したが、贓物運搬の事実は認めていた。弁護人は、この訴因変更が公訴事実の同一性を欠くものであると主張して上告した。
あてはめ
本件では、当初の窃盗罪の訴因と、変更後の贓物運搬罪の訴因は、いずれも「昭和25年12月2日頃にB方から盗まれた自転車等の移動」という一連の出来事を対象としている。窃盗犯人としての関与か、その後の贓物運搬人としての関与かという点で、出来事の推移に関する具体的な認定には多少の異同が生じているが、同一の財物に関する時間的・場所的に近接した一連の経緯に関する事実である。したがって、両事実は社会通念上、単一の事実の範囲内にあると解される。
結論
本件の訴因変更は公訴事実の同一性を失わないため、適法である。
実務上の射程
窃盗罪と贓物罪(贓物運搬、牙保、有償譲受等)との間の訴因変更の可否を論じる際のリーディングケースである。両罪が排他的関係にあるとしても、基本的事実関係に共通性があれば同一性が認められることを示しており、事実記載の「共通性」と「非両立性」の観点から答案を構成する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和25(れ)272 / 裁判年月日: 昭和25年5月16日 / 結論: 破棄差戻
一 本件公訴状に記載された事實は「被告人は昭和二三年四月二二日東京都中央區所在A病院別館において連合國占領軍所有のチウイングガム一千個を窃取した」というのであり、原判決の認定した事實は「被告人は昭和二三年四月二二日東京都港區a所在米軍補給部隊から東京都中央區bc丁目A陸軍病院別館へ米軍用砂糖菓子類を貨物自動車で運搬する…
事件番号: 昭和25(れ)217 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
論旨第二點は、被告人Aに對する起訴事實は窃盜であるのに、原判決が賍物運搬として斷罪したのは、不告不理の原則を破るものだ、というのである。しかし賍物運搬は窃盜の事後においてこれに便益を確保する犯罪であるから、窃盜罪の公訴事實中には賍物運搬罪の事實をも含むものと解すべく、罪名に變更があつても、起訴事實の同一性を害するもので…