所論は、検察官が当初窃盗として起訴した公訴事実に、後に賍物寄蔵の訴因及び罰条を予備的に追加し、第一審がその予備的訴因について被告人に有罪を言い渡し、原審またはこれを是認したことをもつて刑訴法違反であると主張するに帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして本件の主たる訴因である「被告人は昭和二十八年九月二十一日午前一時頃京都市a区b通りc下るd丁目e番地A方前路上に於て同人所有のリヤカー一台(時価一万円位)を窃取した」という事実と、追加された予備的訴因である「被告人は昭和二十八年九月二十一日午前一時頃京都市a区f条g路上で知人Bより、その盗賍たるの情を知りながら、リヤカー一台(時価一万円位)を預りもつて賍物の寄蔵をなした」という事実との間には、日時の同一、場所的関係の近接性及び不法に領得されたA所有のリヤカー一台に被告人が関与したという事実に変りはないから、右両訴因の間の基本的事実関係は、その同一性を失うものでないと解するを相当する。従つて第一審判決及びこれを是認した原判決には訴訟法違反も認められない。
公訴事実に同一性の認められる一事例
刑法235条,刑法256条,刑訴法312条
判旨
窃盗罪と贓物寄蔵罪の訴因間には、日時・場所の近接性及び対象物件の同一性が認められる場合、基本的事実関係における同一性が認められ、訴因の変更が許容される。
問題の所在(論点)
窃盗罪と贓物寄蔵罪との間に、刑事訴訟法312条1項の「公訴事実の同一性」が認められるか。
規範
訴因の変更(刑事訴訟法312条1項)が許される「公訴事実の同一性」とは、両訴因の基本的事実関係が同一であることをいう。具体的には、犯行の日時、場所の近接性、及び行為の対象となった客体の同一性等の諸要素を総合的に考慮して判断される。
重要事実
被告人は当初、昭和28年9月21日午前1時頃、路上でリヤカー1台を窃取したという窃盗の事実で起訴された。その後、検察官は「同日時、近接する場所において、知人より盗贓であることの情を知りながら同リヤカーを預かった」という贓物寄蔵の訴因を予備的に追加した。
あてはめ
本件の両訴因を比較すると、第一に、犯行の日時が同一である。第二に、犯行場所についても地理的な近接性が認められる。第三に、対象物件は不法に領得された同一の被害者所有のリヤカー1台であり、被告人がこれに関与したという事実に変わりはない。したがって、非両立的な関係(自ら盗んだか、他人の盗品を預かったか)にあるものの、社会通念上、基本的事実関係の同一性を失うものではないと評価できる。
結論
窃盗と贓物寄蔵の両訴因間には公訴事実の同一性が認められるため、訴因の追加は適法である。
実務上の射程
窃盗罪と贓物関与罪のように、一方が成立すれば他方が成立しないという択一的・排他的な関係にある罪種間であっても、日時・場所・客体の共通性に基づき事実関係が密接に関連していれば、訴因変更の範囲内として許容されることを示した判例である。
事件番号: 昭和26(あ)3398 / 裁判年月日: 昭和27年10月30日 / 結論: 棄却
「被告人IはKと共謀して昭和二五年一二月二日頃堺市a町b丁目)c番地jで自転車一台及び飴一瓶を窃取した。」との窃盗の訴因を「被告人Iは同日右j附近までKと同行し同人の依頼により賍品たる自転車等をその情を知りながら大阪市d区e町f丁目g番地附近まで運搬した。」との賍物運搬の訴因に変更することは差支えない。
事件番号: 昭和26(あ)98 / 裁判年月日: 昭和27年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等寄蔵罪と盗品等運搬罪の関係につき、各行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものである場合には、併合罪(刑法45条前段)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が盗品等の寄蔵および運搬を行った事案において、原判決は、寄蔵行為と運搬行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものであると認定した。これに…
事件番号: 昭和26(あ)1943 / 裁判年月日: 昭和27年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪と贓物牙保罪又は同寄蔵教唆罪との間には、公訴事実の同一性が認められるため、訴因の変更が可能である。公判開始後であっても、訴因の予備的追加又は変更は許容される。 第1 事案の概要:被告人が窃盗罪で起訴されたが、公判の過程で当該事件が盗品等関与罪(贓物牙保罪または贓物寄蔵教唆罪)に該当する可能性…