他人の依頼により賍物を預つた者が一旦之を依頼者に返還し、更にその賍物の賣買を周旋した場合には、賍物寄藏罪と賍物牙保の二罪が成立する。
賍物寄藏と賍物牙保とが併合罪となる場合
刑法45條,刑法256條2項
判旨
盗品等寄蔵罪の成立後にその状態が終了し、その後に改めて売却の周旋を依頼された場合には、両罪は別個独立に成立し、併合罪となる。当初から売却の周旋を目的として寄蔵したものでない限り、寄蔵行為が牙保行為に吸収されることはない。
問題の所在(論点)
盗品等寄蔵罪(刑法256条2項)の成立後に、同一の客体について盗品等牙保罪(同項)がなされた場合、両罪は包括一罪となるか、あるいは別個独立に成立して併合罪(同法45条前段)となるか。
規範
当初から売却の周旋を依頼されたために盗品を預かったものでない限り、寄蔵行為の終了後に改めて周旋依頼を受けて牙保行為を行った場合は、寄蔵罪が牙保罪に吸収されることはなく、両罪は別個独立に成立する。
重要事実
被告人は、Aらから「明日取りに来るから預かってくれ」と依頼され、盗品であると知りながらタイヤ1本を預かった。翌日、Aらがタイヤを取りに来たためこれを返還したが、Aらが自らトラック運転手に売却しようとして失敗した。そこで、被告人はAらから改めて「売ってくれ」と頼まれ、当該タイヤの売却を周旋した。
事件番号: 昭和26(あ)98 / 裁判年月日: 昭和27年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等寄蔵罪と盗品等運搬罪の関係につき、各行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものである場合には、併合罪(刑法45条前段)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が盗品等の寄蔵および運搬を行った事案において、原判決は、寄蔵行為と運搬行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものであると認定した。これに…
あてはめ
被告人は当初、保管のみを目的としてタイヤを預かっており、この時点で寄蔵罪が成立する。翌日にタイヤを返還したことで寄蔵の状態は一旦終了している。その後に改めてなされた周旋依頼は、先の寄蔵行為とは目的を異にする新たな犯意に基づくものである。したがって、たとえ日時が近接・連続していたとしても、後身の牙保行為が前身の寄蔵行為を当然に包含するものとはいえない。
結論
被告人の所為については、盗品等寄蔵罪と盗品等牙保罪がそれぞれ独立に成立し、併合罪として処断される。
実務上の射程
盗品等罪における複数行為の罪数関係を判断する基準を示す。当初から周旋目的で寄蔵した場合は「周旋のための保管」として牙保罪の一罪に寄蔵が吸収される余地があるが、本件のように犯意の更新や状態の断絶がある場合は併合罪となる。答案上は、時系列に沿って「犯意の共通性」や「行為態様の継続性」の有無を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和37(あ)2414 / 裁判年月日: 昭和39年2月28日 / 結論: 棄却
いやしくも賍物たるの情を知りながら賍物の売買を仲介周旋した事実がある以上、その周旋にかかる賍物の売買が成立しなくとも、賍物牙保罪の成立をさまたげるものでない(昭和二三年一一月九日第三小法廷判決、刑集二巻一二号一五〇四頁、同二六年一月三〇日同小法廷判決、刑集五巻一号一一七頁各参照)。
事件番号: 昭和26(れ)2432 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品を買い受ける目的で、当該盗品を自ら運搬した行為について、盗品等運搬罪(刑法256条2項)の成立を認めた原判決を維持した。 第1 事案の概要:被告人Aは、被告人Bから盗品を買い受けるために、当該盗品を自ら運搬した。弁護人は、買受けの手段として行われた運搬は独立した運搬罪を構成しない旨を主張して上…
事件番号: 昭和29(あ)3831 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
賍物四点の売却を依頼されて甲地より乙地にこれを運搬し、うち二点の売却を了したが他は売却するにいたらなかつた行為は、賍物運搬牙保罪の包括一罪として処罰すべきである。