判旨
窃盗罪を教唆した者が、後に当該窃盗犯人からその盗品を預かり寄蔵した場合には、賍物寄蔵罪は窃盗教唆罪に吸収されず、両罪の併合罪が成立する。
問題の所在(論点)
窃盗罪を教唆した者が、その窃盗によって得られた盗品を寄蔵した場合、後者の行為は前者の行為に吸収される不可罰的事後行為となるか、それとも別罪として併合罪となるか。
規範
本犯を教唆した者であっても、事後的に盗品等の譲受け、運搬、保管、有償処分あっせん等の行為を行った場合には、本犯の教唆罪とは別に盗品関与罪が成立し、両者は併合罪の関係に立つ。
重要事実
被告人は、他人に窃盗を教唆して窃盗を実行させた後、当該実行行為によって得られた盗品(賍物)を寄蔵したとして、窃盗教唆罪および賍物寄蔵罪(現行法の盗品等保管罪に相当)に問われた。
あてはめ
窃盗教唆罪は、他人に窃盗の決意を抱かせて実行させることで成立し、その保護法益は本犯と同様に財産権および社会秩序にある。これに対し、賍物寄蔵罪(盗品等保管罪)は、本犯の追求権を困難にするだけでなく、新たな侵害を加える独立の犯罪類型である。本件において、被告人は窃盗を教唆した後に盗品を預かっており、これは窃盗教唆の評価に含まれ尽くすものではなく、新たな法益侵害を伴う事後行為といえる。
結論
窃盗教唆罪と賍物寄蔵罪の両罪が成立し、これらは併合罪(刑法45条前段)となる。
実務上の射程
共犯者による事後的な盗品関与についても、本犯(実行犯)自身が行う不可罰的事後行為とは異なり、別罪の成立を認めるのが実務の確立した立場である。答案上は、本犯成立後の別個の行為として罪数関係(併合罪)を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和26(あ)1943 / 裁判年月日: 昭和27年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪と贓物牙保罪又は同寄蔵教唆罪との間には、公訴事実の同一性が認められるため、訴因の変更が可能である。公判開始後であっても、訴因の予備的追加又は変更は許容される。 第1 事案の概要:被告人が窃盗罪で起訴されたが、公判の過程で当該事件が盗品等関与罪(贓物牙保罪または贓物寄蔵教唆罪)に該当する可能性…
事件番号: 昭和24(れ)2728 / 裁判年月日: 昭和25年3月24日 / 結論: 棄却
他人の依頼により賍物を預つた者が一旦之を依頼者に返還し、更にその賍物の賣買を周旋した場合には、賍物寄藏罪と賍物牙保の二罪が成立する。
事件番号: 昭和27(あ)6332 / 裁判年月日: 昭和29年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等運搬教唆罪は、本犯である窃盗罪の既遂後に、被教唆者が盗品等の運搬罪を実行することによって成立する。本犯の成立と被教唆者の実行行為があれば、教唆者について同罪の成立が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、本犯による窃盗罪が既に成立した後に、被教唆者に対して当該盗品の運搬を教唆した。その後、…
事件番号: 昭和26(あ)97 / 裁判年月日: 昭和27年9月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等の保管を容易にする等の行為によって正犯の実行を援助した場合には、盗品等保管罪の幇助犯が成立する。また、被告人にとって不利益となる方向への罪名変更の主張は、上告理由として採用されない。 第1 事案の概要:被告人が、盗品等(賍物)の寄蔵(保管)行為について、正犯の実行を容易にするなどの援助を行っ…
事件番号: 昭和26(あ)98 / 裁判年月日: 昭和27年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等寄蔵罪と盗品等運搬罪の関係につき、各行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものである場合には、併合罪(刑法45条前段)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が盗品等の寄蔵および運搬を行った事案において、原判決は、寄蔵行為と運搬行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものであると認定した。これに…