判旨
共謀共同正犯において、一部の者が実行着手前に共謀関係から脱退したと認められない限り、他の共犯者が行った犯行について共同正犯としての責任を免れることはできない。
問題の所在(論点)
数人が犯罪を共謀した場合において、その実行着手前に一部の者が共謀関係から離脱したと認められるための要件、および離脱が認められない場合の刑事責任の範囲が問題となる(刑法60条)。
規範
実行着手前の共謀関係からの離脱が認められるためには、単に主観的に離脱の意思を有するだけでは足りず、共謀によって形成された心理的・物理的因果関係を解消し、他の共犯者の実行を阻止するなどの措置を講じて、客観的に共謀関係から脱退したと認められる状態が生じていることを要する。
重要事実
被告人は、他の共犯者らと共に強盗傷人の犯行を計画し、共謀関係を形成した。その後、被告人は犯行から脱退した旨を主張したが、原審は証拠に基づき、被告人が強盗傷人の犯行の共謀関係から脱退したものとは認められないと認定した。被告人は、自らの離脱を前提として責任の免除を求めて上告した。
あてはめ
本件において、被告人は強盗傷人の共謀に加わっていたところ、原判決の認定によれば、被告人が共謀関係から脱退した事実は証拠上認められない。したがって、共謀に基づき形成された犯行への寄与や因果関係は依然として存続しており、被告人は他の共犯者の行為についても共同正犯としての責任を負うべきである。被告人の主張は、共謀関係が解消されたと認められる具体的な事情を欠いている。
結論
被告人は共謀関係から脱退したものとは認められず、他の共犯者の行った強盗傷人について共同正犯としての責を負う。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(れ)293 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
既に共謀して強盜をした以上、かりに、所論のごとく他の共犯者の暴行の結果たる傷害について被告人に故意、過失がなかつたとしても被告人も、また強盜傷人罪について共同正犯の責を負わなければならないのである。(昭和二三年(れ)第二四九號同年六月一二日第二小法廷判決)
共謀関係からの離脱を主張する際の基本判例として機能する。答案上は、離脱の意思の表明と、共謀による影響(因果関係)の解消という二段階の検討が必要であることを示す際に引用すべきである。本判決は、事実認定のレベルで離脱を否定しているが、後の判例法理における「因果関係の解消」の必要性を実質的に示唆するものといえる。
事件番号: 昭和26(れ)599 / 裁判年月日: 昭和26年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯において、共謀者の一人が強盗の現場で財物強取の手段として暴行を加え、被害者に傷害を与えた場合、他の共謀者もその傷害の結果について強盗傷人罪の刑事責任を負う。 第1 事案の概要:被告人AおよびCは、Bら計4名と共謀して強盗に及んだ。強盗の現場において、共謀者の一人であるBが、財物を強取す…
事件番号: 平成19(あ)1580 / 裁判年月日: 平成21年6月30日 / 結論: 棄却
共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀した被告人が,共犯者の一部が住居に侵入した後強盗に着手する前に,見張り役の共犯者において住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく,待機していた現場から上記見…
事件番号: 昭和24(れ)369 / 裁判年月日: 昭和24年5月24日 / 結論: 棄却
しかし、強盜犯人と意思連絡のもとに見張等をした者は、右共犯者の行爲を利用して自己の犯意を實現したものであつて、共同正犯にほかならぬこと、當第三小廷にもその判例がある。(昭和二三年(れ)第三五一號、同年七月二〇日判決)