共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀した被告人が,共犯者の一部が住居に侵入した後強盗に着手する前に,見張り役の共犯者において住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく,待機していた現場から上記見張り役らと共に離脱したなどの本件事実関係の下では,当初の共謀関係が解消したとはいえない。
共犯者が住居に侵入した後強盗に着手する前に現場から離脱した場合において共謀関係の解消が否定された事例
刑法60条,刑法130条前段,刑法236条1項
判旨
共謀共同正犯の一人が実行着手前に離脱を申し出た場合であっても、既に一部の共犯者が住居に侵入し、離脱者が犯行防止措置を講ずることなく一方的に立ち去ったにすぎないときは、当初の共謀関係は解消されない。
問題の所在(論点)
数人が特定の犯罪を共謀し、その一部の者が実行着手前に離脱の意思を表示して立ち去った場合、その後の他の共犯者による実行行為について、離脱した者は共同正犯としての責めを負うか。特に、一部の共犯者が既に住居侵入を開始している状況での離脱の可否が問題となる。
規範
共謀関係からの離脱が認められるためには、当初の共謀によって形成された物理的・心理的因果性が遮断される必要がある。実行着手前であれば、離脱の意思表示を行い、他の共犯者がこれを了承すること、あるいは当初の共謀に基づき既に生じている危険を解消する等の措置を講じない限り、共謀関係の解消(離脱)は認められない。
重要事実
被告人は、共犯者らと民家に侵入して金品を強奪する共謀を遂げた。計画に従い、共犯者2名が先行して被害者宅に侵入し、侵入口を確保した。その後、車内で待機していた見張り役の共犯者が、犯行の発覚を恐れて屋内の共犯者に「先に帰る」と一方的に伝えて電話を切り、被告人もこれに同意して共に車で現場を立ち去った。しかし、被告人においてそれ以上の犯行防止措置を講じることはなかった。屋内に残った共犯者らは、被告人らの離脱を知った後も強盗を実行し、被害者に怪我を負わせた。
事件番号: 昭和28(あ)883 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯において、一部の者が実行着手前に共謀関係から脱退したと認められない限り、他の共犯者が行った犯行について共同正犯としての責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:被告人は、他の共犯者らと共に強盗傷人の犯行を計画し、共謀関係を形成した。その後、被告人は犯行から脱退した旨を主張したが、…
あてはめ
被告人は、既に共犯者2名が住居内に侵入し、強盗の準備が整った段階で離脱している。見張り役による電話連絡は「先に帰る」と一方的に伝えたにすぎず、屋内の共犯者がこれを了承した事実は認められない。また、被告人は離脱に際して、既に生じていた住居侵入状態を解消したり、後続の犯行を物理的に阻止したりするなどの措置を講じていない。したがって、被告人の離脱後も、当初の共謀に基づく心理的・物理的影響力(因果性)は依然として残存していたといえる。
結論
被告人が離脱したのは強盗の実行着手前であるが、当初の共謀関係が解消されたとは認められない。よって、被告人はその後の強盗致傷罪についても、共謀共同正犯としての責任を負う。
実務上の射程
実行着手前の離脱において、単なる意思表明と立ち去りだけでは不十分であり、先行行為(住居侵入等)によって生じた危険を解消する「作為」が重視されることを示した。答案上では、先行行為の有無を確認し、因果性を遮断するに足りる具体的措置(説得や通報等)があったかを検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和22(れ)280 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 被告人等數名が強盜を共謀し、その中、被告人以外の者が被害者を脅迫して財物を奪取した以上、たとえ、被告人が暴行脅迫を行はなかつたとしても、強盜罪の共同正犯としての責任を兔れない。 二 裁判所法第二六條第二項第二號中刑法第二三六條、第二三七條及び第二三九條の罪に係る事件は地方裁判所の一人の裁判官がこれを取り扱いうる旨の…