一 被告人等數名が強盜を共謀し、その中、被告人以外の者が被害者を脅迫して財物を奪取した以上、たとえ、被告人が暴行脅迫を行はなかつたとしても、強盜罪の共同正犯としての責任を兔れない。 二 裁判所法第二六條第二項第二號中刑法第二三六條、第二三七條及び第二三九條の罪に係る事件は地方裁判所の一人の裁判官がこれを取り扱いうる旨の規定は違法に違反するものではない。
一 強盜の共謀と暴行脅迫をしなかつた者の責任 二 裁判所法第二六條第二項第二號中刑法第二三六條、第二三八條、第二三九條の罪の除外規定の合憲性
刑法60條,刑法236條1項,裁判所法26條2項2號
判旨
当初は窃盗の共謀であったとしても、実行中に他者の強盗への翻意を認識した上で行動を共にした場合には、その時点で強盗の通謀が成立し、強盗罪の共同正犯が成立する。
問題の所在(論点)
窃盗の共謀に基づき侵入した後に、共犯者が強盗へと翻意した場合において、これを認識しつつ行動を継続した被告人に強盗罪の共同正犯(刑法60条、236条1項)が成立するか。
規範
実行行為者が犯罪の実行中に当初の予定を超えた犯罪(強盗)を行う意思を形成した場合、他の共犯者がその情を知りながら、これを制止することなく自らも行動を共にしたときは、その知った時点において共犯者間に新たな犯罪(強盗)の通謀が成立したものと解される。この場合、自ら直接暴行・脅迫を行わなくとも、共同正犯としてその重い罪の責任を負う。
重要事実
被告人は、当初AおよびBと窃盗目的で民家に侵入したが、家人に発見された。A・Bはそれぞれ小刀や出刃包丁を取り出して家人を脅迫し、金品を物色し始めた。被告人は、A・Bが家人を脅迫して金品を強奪しようとしていることを認識したが、Bから渡された出刃包丁を持ったまま炊事場で米を取り出すなど、A・Bと行動を共にして最終的に三人で金品を奪取した。
事件番号: 昭和23(れ)1205 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
一 被告人は相被告人と共謀して強取行爲をも分擔したものというべく、從つて、假りに所論のごとく被告人は相被告人の兇器所持並びに兇器使用の事實を知らなかつたとしても原判決が證據によらずして強盜共謀の事實を認定した違法ありといえない。 二 犯罪の日時は、法律上別段の定め(例えば日出前又は夜間においてというごとき)のない限り、…
あてはめ
被告人は、A・Bが家人に対して凶器を示し脅迫を開始した際、彼らが強盗を行おうとしていることを認識した。この認識を得た後も、被告人はBから包丁を受け取り保持したまま、炊事場での物色行為を継続し、A・Bと行動を共にしている。この事実は、強盗の認識が生じた時点で、被告人とA・Bとの間に「強盗を行おう」という新たな通謀が成立したことを裏付けるものである。したがって、被告人自身が直接の暴行・脅迫を行っていなくても、共謀に基づく実行行為が認められる。
結論
被告人とA・Bとの間に強盗の通謀が認められるため、被告人は強盗罪の共同正犯としての責任を負う。
実務上の射程
承継的共同正犯や共謀の射程が問題となる場面で、実行の着手後に生じた態様の変更(窃盗から強盗への格上げ)に対する認識と関与の継続を根拠に、重い罪名での共謀成立を認める際の有力な根拠となる。現場共謀(順次共謀)の一類型として整理できる。
事件番号: 昭和24(れ)1636 / 裁判年月日: 昭和24年10月29日 / 結論: 棄却
共謀の事實が認められる以上は現場において、被告人が自ら暴行脅迫若しくは財物強取の行爲をしなくても、他の共犯者のした強盜の所爲について、共同正犯の責任を兔れることはできない。
事件番号: 昭和24(れ)2466 / 裁判年月日: 昭和25年2月16日 / 結論: 棄却
強盜の共謀をした者は他の共謀者の暴行脅迫強取等の實行行爲を通じて自己の犯意が實行に移された以上は、たとい、自分は直接強盜の實行行爲をしなくとも強盜の共同正犯たる罪責を免れえないものであるから共謀者の一人である被告人が判示のごとく見張行爲をした以上判示他の共謀者の脅迫、強奪行爲に對しその責を負うべきものである。されば、原…