判旨
数人が強盗を共謀し、そのうちの一人が物置付近で見張りをした場合、実行行為を直接分担していなくても、共謀共同正犯として強盗罪の責任を負う。共同意思の下に役割分担をして犯罪を実現した以上、見張り役も正犯としての罪責を免れない。
問題の所在(論点)
強盗の実行行為を直接分担せず、現場付近で見張りをしていたに過ぎない者について、強盗罪の共同正犯が成立するか。共謀共同正犯の成立要件と見張り役の罪責が問題となる。
規範
特定の犯罪を遂行する目的で共謀を遂げた者が、その共謀に基づき、共同意思の下に役割分担をして犯罪を実行した場合には、直接実行行為に加担しない見張り行為であっても、共謀共同正犯(刑法60条)としてその全責を負う。
重要事実
被告人Aは、他の共犯者B、C、D、Eと強盗を行うことを共謀した。実行当日、他の共犯者が強盗の実行行為に及んでいる間、被告人Aは現場付近の物置付近において見張りを行った。被告人側は、窃盗の意思であった、あるいは現場から離れた場所にいた等の主張をしたが、原審は共謀に基づく見張り事実を認定した。
あてはめ
被告人Aは他の共犯者らと本件強盗を共謀していることから、強盗の共同意思が存在する。また、強盗の実行に際して物置付近で見張りを行ったことは、共謀に基づく重要な役割分担であるといえる。したがって、直接の奪取行為等を行っていなくても、共謀に基づく実行行為の一部を担ったものと解される。
結論
被告人Aには、共謀共同正犯として強盗罪が成立する。原審が証拠に基づき認定した「強盗の共謀および見張りの事実」により、正犯としての責任を負わせることは適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(れ)2466 / 裁判年月日: 昭和25年2月16日 / 結論: 棄却
強盜の共謀をした者は他の共謀者の暴行脅迫強取等の實行行爲を通じて自己の犯意が實行に移された以上は、たとい、自分は直接強盜の實行行爲をしなくとも強盜の共同正犯たる罪責を免れえないものであるから共謀者の一人である被告人が判示のごとく見張行爲をした以上判示他の共謀者の脅迫、強奪行爲に對しその責を負うべきものである。されば、原…
共謀共同正犯の成否が争われる事案において、現場での「見張り」が正犯性を基礎づける重要な事実であることを示す。答案では、共謀の存在に加え、見張りが犯罪実現に果たした機能的役割(機能的行為支配)を論述する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1636 / 裁判年月日: 昭和24年10月29日 / 結論: 棄却
共謀の事實が認められる以上は現場において、被告人が自ら暴行脅迫若しくは財物強取の行爲をしなくても、他の共犯者のした強盜の所爲について、共同正犯の責任を兔れることはできない。
事件番号: 昭和25(れ)1226 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗の実行を謀議し見張り役を担当した者は強盗の共同正犯となり、住居とは別個の店舗であっても、他人の管理する建造物であればその侵入は住居侵入等罪(刑法130条)を構成する。 第1 事案の概要:被告人Bは、他の2名と共に強盗を行うことを謀議した。実際の強盗の実行に際して、Bは現場での実行行為そのもので…
事件番号: 昭和23(れ)1205 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
一 被告人は相被告人と共謀して強取行爲をも分擔したものというべく、從つて、假りに所論のごとく被告人は相被告人の兇器所持並びに兇器使用の事實を知らなかつたとしても原判決が證據によらずして強盜共謀の事實を認定した違法ありといえない。 二 犯罪の日時は、法律上別段の定め(例えば日出前又は夜間においてというごとき)のない限り、…
事件番号: 昭和23(れ)356 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
數名のものが強盜の共謀をしてその内一名が屋外の見張りを擔當し他のものが強盜の實行行爲をした場合には、その見張りをした者についても強盜の共同正犯が成立することは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年三月一六日言渡昭和二二年(れ)第二三五號事件判決)