しかし、強盜犯人と意思連絡のもとに見張等をした者は、右共犯者の行爲を利用して自己の犯意を實現したものであつて、共同正犯にほかならぬこと、當第三小廷にもその判例がある。(昭和二三年(れ)第三五一號、同年七月二〇日判決)
強盜の見張りと強盜の共同正犯
刑法60條,刑法236條1項
判旨
共謀共同正犯の成立には共犯者間での意思連絡が必要であるが、判決書においてその日時、場所、過程を具体的に判示する必要はない。また、長期拘禁後の自白であっても、拘禁と自白の間に因果関係がないと認められる場合には、憲法38条2項等の「不当に長く拘禁された後の自白」に当たらない。
問題の所在(論点)
1. 共同正犯の判示において、共謀の具体的な日時、場所、過程を明示する必要があるか。 2. 共謀に基づき見張り等の従属的行為を行った者に共同正犯が成立するか。 3. 長期拘禁中に得られた自白が、憲法38条2項により一律に証拠能力を否定されるか。
規範
1. 共同正犯の成立要件としての共謀(意思の連絡)については、共犯者間に意思の連絡があった事実を明確にすれば足り、その日時、場所、および意思連絡の過程までを具体的に判示することを要しない。 2. 憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」とは、不当な拘禁と自白との間に因果関係がある場合を指す。したがって、長期拘禁後の自白であっても、拘禁前の自白や拘禁直後の自白を単に繰り返したに過ぎないなど、拘禁と自白との間に因果関係がないことが明らかな場合には、証拠能力は否定されない。
重要事実
被告人らは集団強盗事件の共犯として起訴された。被告人A、Cは、自らの分担が「見張り」などの従属的な役割に過ぎないとして、共同正犯の成立を争った。また、被告人Cは、判決に共謀の具体的な日時や場所、過程が示されていないことを理由に理由不備を主張した。さらに、被告人BおよびDは、逮捕から数か月経過した後の予審における自白が「不当に長い拘禁後の自白」に当たり、証拠能力を欠くと主張した。しかし、BおよびDは逮捕直後の段階で既に同趣旨の自白をしており、その後も一貫して複数回自白を繰り返していた事実が認められた。
事件番号: 昭和24(れ)293 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
既に共謀して強盜をした以上、かりに、所論のごとく他の共犯者の暴行の結果たる傷害について被告人に故意、過失がなかつたとしても被告人も、また強盜傷人罪について共同正犯の責を負わなければならないのである。(昭和二三年(れ)第二四九號同年六月一二日第二小法廷判決)
あてはめ
1. 共同正犯は、共謀に基づき互いの行為を利用して自己の犯意を実現するものである。被告人AおよびCは、他の共犯者と意思連絡(共謀)の上で見張り等の行為をしており、たとえ分担が従属的であっても、共謀の事実が認められる以上、共同正犯としての責任を負うのが当然である。 2. 共謀の認定については、意思の連絡があった事実が明確であれば足りる。日時・場所等の詳細な過程を判示せずとも、認定に違法はない。 3. 被告人BおよびDの自白について検討するに、両名は逮捕後数日のうちに最初の自白を行い、その後長期にわたり同趣旨の自白を計6〜7回繰り返している。このように拘禁直後の自白を継続・反復している事実に照らせば、長期拘禁と後の自白との間に因果関係は認められず、任意性を疑うべき不当な拘禁による自白とはいえない。
結論
1. 共謀の具体的過程の判示は不要であり、理由不備には当たらない。 2. 見張り行為であっても共謀が認められれば共同正犯となる。 3. 拘禁と因果関係のない長期拘禁後の自白は証拠能力を有し、原判決に違法はない。
実務上の射程
共謀共同正犯の判示事項の簡略化を認めた点、および「不当に長い拘禁」の解釈において因果関係を重視する実務上の運用を追認した点で重要である。答案上は、共謀の認定手法や、自白の任意性・証拠能力を論ずる際の「拘禁と自白の因果関係」の検討材料として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)475 / 裁判年月日: 昭和24年5月28日 / 結論: 棄却
一 然し同一審級の同一公判期日における共同被告人に對しては、刑訴應急措置法第一一條第二項の規定により常に被告人相互に訊問の機會は與えられているのであるから、右條件の下にある共同被告人の公判調書には同法第一二條第一項の適用はないのである。 二 檢事の本件起訴状には明らかに住居侵入の事實についても記載されてあり、たゞ所論指…
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…
事件番号: 昭和23(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
被告人が相被告人と共謀の上、強盜をした事實を認定している原判決において、二人共謀の事實と共犯者のどちらかが現實に脅迫の實行行爲をしたことが判分上明確である以上、共犯者のうちどちらかが現實に實行行爲をしたかを明示していなくても、被告人の「罪トナルヘキ事實」の判示として缺くるところはない。