判旨
逮捕された被疑者に対し、司法警察員が犯罪事実の要旨を告げ、弁解の機会を与える際、併せて弁護人選任権を告知していれば、刑事訴訟法上の手続的保障として適法である。
問題の所在(論点)
逮捕直後の手続において、司法警察員が犯罪事実の要旨告知および弁解の機会付与を行う際、弁護人選任権の告知が適切になされていたといえるか。また、告知が欠如していた場合、上告理由となる手続違背を構成するか。
規範
逮捕された被疑者に対する手続として、司法警察員は犯罪事実の要旨を告げ、これに関する弁解の機会を与えなければならない(刑事訴訟法203条1項参照)。その際、被疑者に対して弁護人を選任することができる旨を告知し、防御権を行使する機会を実質的に保障することが必要である。
重要事実
被告人は昭和26年11月9日、逮捕状に基づき逮捕された。同日、佐世保市警察署の司法警察員は、被告人に対し犯罪事実の要旨を告げた上で弁解の機会を与えた。その際、当該司法警察員は、被告人に対して弁護人を選任することができる旨をも告知しており、これらの事実は弁解録取書等の記録によって裏付けられていた。
あてはめ
本件記録(逮捕状および弁解録取書)によれば、司法警察員は被告人を逮捕して直ちに犯罪事実の要旨を告知し、弁解の機会を与えている。これと同時に、弁護人選任権についても明確に告知していたことが認められる。したがって、被告人が主張する「弁護人選任の機会を与えられなかった」という事実は存在せず、適正な手続が履践されていたと評価できる。
結論
被告人に対し弁護人選任の機会は適切に与えられており、手続に違法はない。したがって、本件上告は理由がない。
実務上の射程
逮捕直後の弁解録取手続(刑訴法203条)において、弁護人選任権の告知が不可欠であることを確認した事例である。実務上は、弁解録取書の記載内容が手続の適法性を証する重要な証拠となることを示唆している。答案上は、身体拘束手続の適法性を論ずる際、権利告知の有無を事実認定の要素とする際の根拠となり得る。
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事件番号: 昭和28(あ)3703 / 裁判年月日: 昭和30年5月11日 / 結論: 棄却
一 被告人は所持の麻薬がもはや薬効のないものと信じていた旨の主張は、単に麻薬所持の犯意を否認するものに過ぎないものであつて、刑訴第三三五条第二項の主張に当らない。 二 原審において戸田弁護人に対し控訴趣意書提出最終日指定の通知をしなかつたのは、被告人に対して右通知をなした当時、同弁護人については未だ控訴審における弁護人…