「必要的弁護の事件において裁判所が公判期日の前日に弁護人を国選することは当を得たものではないが、その一事により直ちに弁護権の行使を不法に制限したものとはいえない」ことも当裁判所の判決に示されている(昭和二三年(れ)第一四八八号同二四年七月一三日大法廷判決)。されば、原審が所論のように公判期日二日前に弁護人を国選したとしてもその一事によつて直ちに刑訴二八九条を違反したものでもなく、まして憲法第三七条三項に反するものでないことは前記大法廷判決の趣旨に徴し明らである。
控訴審において、いわゆる必要的弁護事件につき公判期日二日前に弁護人を国選することは違法か
憲法37条3項,刑訴法289条,刑訴法404条
判旨
必要的弁護事件において、公判期日の直前に弁護人が選任されたとしても、その一事のみをもって直ちに弁護権の不当な制限や憲法37条3項違反となるわけではない。
問題の所在(論点)
必要的弁護事件において、公判期日の2日前に弁護人を選任することが、弁護権を不当に制限するものとして刑訴法289条または憲法37条3項に違反するか。
規範
必要的弁護事件(刑訴法289条)をいかなる範囲で認めるかは立法政策の問題であり、憲法37条3項が直接これを規定するものではない。また、公判期日の直前に国選弁護人を付したとしても、その一事をもって直ちに弁護権の行使を不当に制限したことにはならず、実質的に弁護の機会が奪われたといえる特段の事情がない限り、刑訴法289条及び憲法37条3項には違反しない。
重要事実
必要的弁護事件に該当する被告人の刑事裁判において、原審(控訴審)は公判期日のわずか2日前に国選弁護人を選任した。被告人側は、このような短期間での選任は実質的な弁護権の保障を欠くものであり、刑訴法289条及び憲法37条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審が公判期日の2日前に弁護人を選任したことは、準備期間の短さという点では当を得たものとはいえない。しかし、過去の大法廷判決の趣旨に照らせば、選任から公判までの期間が短いという「一事」をもって直ちに弁護権が不当に制限されたと断定することはできない。本件の具体的な公判経過において、弁護人がその役割を果たすことが不可能であった等の特段の事情は認められず、手続的な違法があるとはいえない。
結論
公判期日の2日前に弁護人を選任したとしても、直ちに刑訴法289条違反となるものではなく、憲法37条3項にも違反しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
弁護権の形骸化を争う際の限界事例を示す判例である。答案上は、弁護人の選任時期が遅い場合でも、単に期間の短さを指摘するだけでなく、それによって「実質的な弁護活動が妨げられたか否か」という実質的観点から違憲・違法性を検討すべきであることを示唆している。
事件番号: 昭和26(あ)1593 / 裁判年月日: 昭和28年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項の弁護人依頼権は被告人が自ら行使すべきものであり、裁判所は被告人の権利行使を妨げなければ足り、弁護人選任権の告知や照会の義務を負うものではない。必要的弁護事件において被告人の請求を待たず職権で弁護人を選任する措置は、憲法の問題を生じさせない。 第1 事案の概要:必要的弁護事件の控訴審…