刑訴三二八条にいう証拠は被告人、証人その他の者の供述の証明力を攻撃する資料に止まり、同法三二一条乃至三二四条の規定で証拠能力が認められていないものであつて、犯罪事実を認定するための刑訴三三五条の証拠の標目として掲記すべきものではないから、第一審判決が所論Aの供述調書を証拠の標目中にかかげたのは失当たるを免れないこと所論のとおりである。しかしながら本件において所論供述調書を除いてもその余の挙示の証拠で判示事実は優に認定することができるから、かような場合には刑訴四一一条を適用すべき事由となすに足りないこと当裁判所の判例とするところである。
証拠の標目中に刑訴三二八条による証拠かかかげられていても、その余の挙示の証拠で犯罪事実が認定され得る場合と刑訴四一一条
刑訴法328条,刑訴法335条,刑訴法411条
判旨
刑事訴訟法328条にいう証拠は、供述の証明力を争うための資料に限定され、犯罪事実を認定する直接の証拠として用いることはできない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法328条に基づき提出された証拠を、犯罪事実を認定するための実質証拠として「証拠の標目」に掲記することの是非が問題となる。
規範
刑事訴訟法328条に基づく証拠は、被告人や証人等の供述の証明力を攻撃するための資料(弾劾証拠)にとどまる。したがって、同法321条ないし324条の規定により伝聞例外としての証拠能力が認められない限り、犯罪事実を認定するための実質証拠として用いることはできず、判決文の「証拠の標目」に犯罪事実認定の証拠として掲記することは許されない。
重要事実
被告人Bに対する刑事事件において、第一審判決は、刑事訴訟法321条ないし324条の要件を満たさず証拠能力が認められないはずのAの供述調書を、犯罪事実を認定するための「証拠の標目」の中に掲記した。弁護人は、これが訴訟法違反にあたるとして上告した。
あてはめ
本件において、第一審判決がAの供述調書を証拠の標目に掲げたことは、本来弾劾資料に限定されるべき証拠を事実認定の基礎としたことを意味し、失当であるといえる。もっとも、当該供述調書を除外しても、他に挙示された証拠によって判示事実は十分に認定可能である。したがって、この誤りは判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反(刑訴法411条)にはあたらないと解される。
結論
刑訴法328条の証拠を実質証拠として用いることは失当であるが、他の証拠で事実認定が可能であれば破棄理由にはならない。
実務上の射程
伝聞禁止の原則の例外としての328条の証拠が、実質証拠(事実認定の証拠)として機能しないことを明示した点に意義がある。答案上は、伝聞証拠の該当性を論じる際、328条の趣旨が弾劾に限定されることを示す根拠として活用すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)4276 / 裁判年月日: 昭和30年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決における証拠の挙示が不十分であっても、事案が比較的簡単で、証拠標目がどの事実に連結するかが概ね明瞭であれば、刑訴法335条1項の法令違反は「著しく正義に反する」ものとはいえず、上告理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人Aら4名が起訴された事案において、第一審判決は有罪を宣告したが、…