判旨
窃盗罪において、先行する実行者の行為が既に既遂に達している場合、その後に協力した者は窃盗罪の共同正犯ではなく、事後的な関与として評価されるべきである。
問題の所在(論点)
先行者の実行行為が既に既遂に達している場合に、その後の協力行為をもって窃盗罪の共同正犯(刑法60条、235条)が成立するか、あるいは既遂後の関与に過ぎないかが問題となる。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、実行行為の全部または一部を共同して行うか、あるいは共謀に基づき他人の実行行為を自己の犯罪として遂行することが必要である。先行者が既に財物の占拠を自己に移転させ既遂に至った後においては、新たな占有侵害を伴う実行行為を共同で行う余地はないため、特段の事情がない限り、既遂後の関与は共同正犯を構成しない。
重要事実
被告人は、昭和27年10月20日頃、Aと共謀の上、富山県内の発電所付近において、電力会社所有の銅屑54.9kgおよび鉛屑61.2kgを窃取したとして、窃盗罪の共同正犯で起訴された。弁護人は、Aが既に銅屑類を窃取した(既遂に達した)後に、被告人が協力したに過ぎないため共同正犯は成立しない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は被告人がAと「共謀の上」で窃取した事実を肯定している。弁護側は「Aの窃取行為は既遂であり、その後に被告人が協力したことで初めて既遂となったわけではない(=事後従犯的である)」と主張したが、裁判所は、原判決が認定した事実は「当初からの共謀に基づく窃盗」であり、先行者の既遂後に初めて協力したという解釈は判決文上否定されるとした。したがって、既遂後の加担ではなく、実行行為段階での共謀に基づく共同正犯としての責任が認められる。
結論
被告人はAとの共謀に基づき窃盗の実行行為を分担したと認められるため、窃盗罪の共同正犯が成立する。
実務上の射程
本判決は、窃盗の既遂時期と共同正犯の成立範囲を画するものである。実務上、先行者が占有を取得した後に加担した場合は、承継的共同正犯の成否や、盗品関与罪等の別罪の検討が必要となるが、本件のように当初からの共謀が認められる場合には、その後の協力態様にかかわらず共同正犯として処断されることを示唆している。
事件番号: 昭和28(あ)3524 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単独正犯として起訴された事実について、裁判所が訴因変更手続を経ることなく共同正犯と認定することは、直ちに違法となるものではない。 第1 事案の概要:被告人が単独犯として起訴されたが、第一審判決は、証拠に基づき被告人の妻との共謀による共同正犯の事実を認定した。これに対し、被告人側は、訴因変更手続を経…