判旨
単独正犯として起訴された事実について、裁判所が訴因変更手続を経ることなく共同正犯と認定することは、直ちに違法となるものではない。
問題の所在(論点)
単独正犯として起訴された事件において、裁判所が訴因変更手続を経ることなく共同正犯を認定することは、訴因変更の要否の観点から許容されるか。
規範
単独正犯の起訴事実に対し、判決が共同正犯の成立を認定する場合、必ずしも常に訴因変更の手続(刑事訴訟法312条1項)を要するものではない。
重要事実
被告人が単独犯として起訴されたが、第一審判決は、証拠に基づき被告人の妻との共謀による共同正犯の事実を認定した。これに対し、被告人側は、訴因変更手続を経ずに共同正犯と認定したことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、先行する判例(昭和28年11月10日第三小法廷判決)を引用し、単独犯から共同正犯への認定変更について、必ずしも常に訴因変更の手続を要しないとの判断を示した。本件においても、原判決が一部事実について共同正犯を認定したことは、判決に影響を及ぼす事実の誤認や手続上の違法があるとはいえないと判断した。
結論
単独正犯の訴因に対し、訴因変更手続を経ずに共同正犯を認定することは適法であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴因変更の要否につき、実質的不利益の有無を基準とする通説的見解を前提としつつ、単独犯と共同正犯の切り替えについては、防御の認否に実質的な差異がない限り訴因変更は不要とされる。答案上は、本判例を根拠に、争点設定の明確化や防御の機会が確保されているかを検討する際の基礎として用いる。
事件番号: 昭和27(あ)6623 / 裁判年月日: 昭和28年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述録取書について、当該共犯者が共同被告人でない場合には、刑事訴訟法上の伝聞例外の要件を充足する限りにおいて、完全な証拠能力を有する。 第1 事案の概要:被告人の刑事事件において、共犯関係にあるAおよびBの供述録取書が証拠として提出された。弁護人は、これら共犯者の供述が証拠能力を欠くと主張…