判旨
実行行為に直接関与しない者であっても、他の共犯者の実行行為を十分に認識した上で種々の助力をなし、かつあらかじめ利得の分配についてまで相談していた場合には、共謀共同正犯としての罪責を負う。
問題の所在(論点)
実行行為を直接分担していない者が、他の共犯者による犯罪の遂行を認識して助力し、利得の分配に関与した場合に、共同正犯(共謀共同正犯)が成立するか。
規範
特定の犯罪を行うことを他の者と十分に認識し、共通の意思に基づいてこれに助力し、かつ結果の帰属についてあらかじめ合意(利得分配の相談等)をしている場合には、自ら直接実行行為を分担せずとも、共同正犯(刑法60条)としての責任を負う。
重要事実
被告人Dは、他の相被告人らが本件窃盗を行うことを十分に認識していた。その上で、当該窃盗の実行に対して種々の助力を与え、かつ、あらかじめ窃盗によって得られる利得の分配についても相談を行っていた。
あてはめ
被告人Dは、他の共犯者の窃盗行為を認識しており(主観的関与)、これに種々の助力をなした(物理的・心理的寄与)。さらに、あらかじめ利得の分配について相談していた事実は、単なる従属的な幇助にとどまらず、自己の犯罪として結果を享受しようとする意思(正犯意思)を裏付けるものである。したがって、Dは共犯者らと一体となって窃盗を実現したといえる。
結論
被告人Dに窃盗罪の共同正犯の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件のうち、正犯意思を基礎付ける事情として「利得の分配の相談」を挙げている点が重要である。答案上は、共謀の存在および正犯性の判断において、事前の計画性や利益帰属の有無を評価する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2500 / 裁判年月日: 昭和28年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数人が共同して犯罪の実行を謀議し、共謀者の一部がその実行行為に及んだ場合、実行行為を分担しなかった者も共謀共同正犯として刑責を負う。 第1 事案の概要:被告人は他の者らと数人で犯罪の実行を謀議した。その後、共謀者の一部の者が実際の実行行為に及んだが、被告人自身はその実行行為を直接分担しなかった。弁…