被告人はAB等と協力して判示犯罪の実行方を通謀し、被告人自らは右実行々為に加担しなかつたが、賍品の売込先に残つて現物の搬入を持つたというのであり、他の共謀者の実行々為を介して自己の犯罪敢行の意志を実現したものと認めるに十分であるから、被告人において実行担当者、実行方法について関知するところがないとしても共同正犯の罪責を免れるものでないことは、当裁判所の判例に徴し明らかなところである(昭和二三年(れ)第二九六号、同月一〇月六日大法廷判決参照)。
共謀共同正犯の一事例――被告人において実行担当者、実行方法を関知しなかつた場合
刑法60条
判旨
共謀共同正犯が成立するためには、被告人が犯罪の実行行為に直接加担していなくとも、共謀に基づき、他の共謀者の実行行為を介して自己の犯罪を実現したと認められれば足りる。実行担当者や具体的な実行方法を詳細に把握していなかったとしても、共同正犯としての罪責を免れない。
問題の所在(論点)
実行行為の一部を分担せず、かつ実行の細部(担当者や方法)を把握していない者について、刑法60条の共同正犯が成立するか。
規範
実行行為を分担しない者であっても、(1)共謀の事実があり、(2)その共謀に基づき他の共謀者が実行行為に及んだ場合、自己の犯罪敢行の意思を他人の行為を介して実現したものとして、刑法60条の共同正犯としての責任を負う。
重要事実
被告人Dは、共犯者A・Bらと窃盗等の犯罪の実行について通謀した。しかし、被告人自身は実行行為(現場での窃取等)には加担せず、賍品(盗品)の売込先に残って現物の搬入を待つ役割を担っていた。また、被告人は実行担当者や具体的な実行方法については詳細に関知していなかった。
あてはめ
被告人は、A・Bらと犯罪の実行について通謀しており、共謀の存在が認められる。被告人が売込先で搬入を待っていた行為は、他の共謀者の実行行為を介して自己の犯罪敢行の意思を実現しようとしたものといえる。したがって、たとえ被告人自身が実行行為に加担せず、実行の細部を具体的に関知していなかったとしても、共謀に基づく役割分担がなされている以上、共同正犯としての正犯性が認められる。
結論
被告人は実行行為を分担していないが、共謀共同正犯としての罪責を負う。被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件(共謀、共謀に基づく実行)を確認した初期の重要判例である。実行行為の不分担だけでなく、実行の細部に関する認識の欠如も共同正犯の成立を妨げない点を示しており、組織的犯罪等の事案における「共謀」の認定と責任追及の広範さを基礎づけるものとして起案で活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)304 / 裁判年月日: 昭和26年5月29日 / 結論: 棄却
また原判決の言渡のあつた当時は未だ所論執行猶予の期間は経過していなかつたのであつて、従つて、その猶予期間内に更に本件犯罪を犯したことを量刑上参酌することは、決して所論のように不当であるとはいえない。