判旨
起訴状の記載に照らして、判決における犯行態様の判示が米、麹及び水を原料として濁酒又は清酒を製造したという趣旨であることが明らかであれば、判決に法令違反の瑕疵はない。
問題の所在(論点)
判決書における罪となるべき事実の判示において、製造された酒類の種類や原料等の記載が不明確である場合、理由不備等の法令違反(刑事訴訟法405条等)となるか。
規範
判決における事実認定の表示について、起訴状の記載内容と照合し、その判示の趣旨が起訴事実と適合する具体的な製造態様(原料および製造物)を指していることが客観的に明らかである場合には、記載上の不備があったとしても直ちに法令違反とはならない。
重要事実
被告人が濁酒または清酒を製造したとして酒税法違反等で起訴された事案。第一審判決の記載において、製造の具体的態様に関する表現に疑義があり、弁護人は原審において主張しなかった法令違反(判決の理由不備・矛盾等)を上告理由として主張した。具体的には、原料や製造工程の認定が不明確であるとの指摘がなされた。
あてはめ
第一審判決の記載を起訴状の記載と照らし合わせて検討すると、当該判示の趣旨は「米、麹及び水を原料として濁酒又は清酒を製造した」という事実を認定したものと認められる。このように、起訴事実との対応関係から判示内容が合理的に特定できる以上、弁護人が指摘するような法令違反は認められない。また、本件は原審で主張されていない単なる法令違反の主張であり、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
結論
本件上告を棄却する。判決の判示趣旨が起訴状に照らして明白である以上、違法はない。
実務上の射程
判決の事実摘示に多少の舌足らずな点があっても、起訴状等と対照してその意味内容が特定できる限り、判決の不備とはされない。実務上は、判決の更正や解釈によって補完可能な範囲の記載ミスは、破棄理由としての「理由不備」には至らないことを示す事例である。
事件番号: 昭和29(あ)3632 / 裁判年月日: 昭和30年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官事務取扱検察事務官が作成した供述調書について、判決書において「検察官に対する」ものと表示したとしても、それが当該事務官に対する調書を指すことが明瞭であれば、訴訟手続上の瑕疵として上告理由にはならない。 第1 事案の概要:本件において、検察官事務取扱検察事務官であるAが作成した供述調書が存在し…