判旨
検察官事務取扱検察事務官が作成した供述調書について、判決書において「検察官に対する」ものと表示したとしても、それが当該事務官に対する調書を指すことが明瞭であれば、訴訟手続上の瑕疵として上告理由にはならない。
問題の所在(論点)
検察官事務取扱検察事務官が作成した供述調書を、判決書において「検察官に対する」調書と表示することが、刑事訴訟法上の訴訟手続の法令違反に該当するか。
規範
判決書における証拠の表示に不正確な点があったとしても、その内容が記録等に照らして特定可能であり、実質的な誤認を招くものでない限り、適法な手続に基づく証拠の引用として許容される。
重要事実
本件において、検察官事務取扱検察事務官であるAが作成した供述調書が存在した。原判決はこの調書を証拠として引用する際、その作成主体を「検察官に対する」ものとして表示した。弁護人は、この表示が実態と異なる点を捉え、訴訟法違反および違憲である旨を主張して上告した。
あてはめ
記録上、当該供述調書がいずれも検察官事務取扱検察事務官Aによって作成されたものであることは明らかである。原判決がこれらを「検察官に対する」ものと表示した点は確かに正確さを欠く。しかし、文脈上それが前記事務官に対する供述調書を指していることは明瞭である。したがって、この表示上の不正確さは、判決の結論に影響を及ぼすべき実質的な瑕疵とは認められない。
結論
本件の表示の不正確さは単なる訴訟法違反の主張にすぎず、刑訴法405条の上告理由には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
判決書の証拠表示に細微な誤記や不正確な表現があっても、記録上その対象が特定できる場合には、直ちに無効な証拠引用とはならない。実務上は、検察事務官が検察官の職務を代行する場合の書面作成主体と、その判決書での引用形式の許容範囲を示す事例として理解される。
事件番号: 昭和25(あ)1557 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない訴訟法上の違法のみを主張する場合や、職権調査の必要性が認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が虚無の証拠により事実を認定したこと、または不適法に作成された検定調書を罪証に供したという訴訟法上の違法を理由として上告を…