判旨
判決書において証人を戸籍上の氏名ではなく通称で表示したとしても、適法な証拠調べを経た証人と同一人であることが明らかであれば、直ちに訴訟法違反や採証法則違反とはならない。
問題の所在(論点)
判決書における証人の表示が戸籍上の氏名と異なり通称でなされている場合、適法な証拠調べを経た証拠に基づくものといえるか(訴訟手続の適法性および採証法則の成否)。
規範
証拠調べの対象となった証人と判決書に記載された証人の表示が厳密に一致しない場合であっても、それが同一人物を指すことが客観的な資料(他の証拠調べの結果等)から明らかであり、適法な証拠調べの手続を経て罪証に供されているのであれば、その表示の不備は判決の結果に影響を及ぼす違法とはならない。
重要事実
第一審判決は「Aキミ」という人物に対する裁判官の尋問調書を証拠として採用した。しかし、戸籍上の氏名は「Aキヨ」であり、第一審の判決書には通称である「Aキミ」と記載されていた。記録上の他の証拠(Aキヨに対する臨床尋問調書)によれば、本名がAキヨで通称がAキミである同一人であることが確認されていた。弁護人は、この氏名表示の不一致を理由に、適法な証拠調べを経ない証拠を採用した訴訟法違反・採証法則違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、判決書で「Aキミ」と表示された人物は、第一審第三回公判において適法に証拠調べが行われた「Aキヨ」と同一人であることが、他の調書の供述記載から明白である。判決書の表示が通称によるものであり正確性を欠くきらいはあるものの、実質的には適法な証拠調べを経た証人自身の供述を罪証に供したものと認められる。したがって、表示の不備によって証拠の同一性が失われるものではなく、手続的な違法は存在しないと評価される。
結論
判決書の証人表示に通称を用いたとしても、同一人であることが明らかであれば、訴訟法違反や採証法則違反には当たらない。
実務上の射程
証拠裁判主義(刑訴法317条)や証拠調べ手続の適法性が争点となる場面で、形式的な表示の誤りや不一致が直ちに証拠能力や判決の違法に直結しないことを示す一例として利用できる。特に実体的同一性が保たれている限り、形式的不備は「判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認」等には当たらないとする構成に資する。
事件番号: 昭和27(あ)6560 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が特定の者を証人として喚問しなかったとしても、そのことのみをもって憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」による裁判を受けられなかったと解することはできない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、事実誤認、量刑不当、および特定の証人を喚問しなかったことが違憲(公平な裁判所の欠如)にあたる…