一 所論証人の証言は、自己の認識そのものとして供述せられていること記録上明らかである。そして人は自己又は年令の極めて近接した兄弟姉妹の生月日については、その幼小の頃にあつては父母その他のものから教えられることによつてのみ、はじめてこれが知識を得るものであること勿論であるが、その成長するに従い、近親者相亘の密接な生活関係、殊に日常の家庭生活等において集積される自己の体験によりその知識の真実性に関し独自の確信を有するに至るものであることも亦多言を要しないところであるから、かかる知識はその直接体験による認識というを妨ぐるものではない。されば右証言が刑訴三二四条二項の適用を受くべき伝聞証言たることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠くものであり、上告適法の理由とならない。 二 「被告人は自宅において昭和二四年九月二〇日から同月二二日迄の間に兒童であるAに客として男子五名を斡旋し右五名と売淫させ以つて兒童に淫行をさせる行為をした」と判示した第一審判決は所論被告人の所為を一体として兒童福祉法三四条一項六号にいわゆる兒童に淫行をさせる行為をしたものに該当すると判示しているのである。この事は判文上明白であり、同判決には所論のような違法はない。
一 生年月日についての知識と伝聞証言 二 兒童をして数名の男子と売淫させた行為と罪数
刑訴法324条2項,刑訴法320条,刑訴法321条1項3号,兒童福祉法34条1項6号,兒童福祉法40条1項,刑法45条
判旨
自己の生年月日に関する証言は、幼少期の伝聞に端を発するとしても、成長過程での親族等との生活体験を通じて独自の確信に至ったものであれば、直接体験による認識として伝聞証拠(刑事訴訟法324条2項等)に当たらない。
問題の所在(論点)
自己の生年月日に関する供述は、他者から聞いた情報に基づく伝聞証拠として証拠能力が制限されるか、それとも直接体験に基づく証言として許容されるか。
規範
人は自己や近親者の生年月日について、当初は他者からの教示により知識を得るものであるが、成長に伴い、密接な生活関係や家庭生活等において集積された自己の体験により、その知識の真実性について独自の確信を有するに至る。したがって、かかる知識に基づく供述は、直接体験による認識としての性質を有し、伝聞証拠には該当しない。
重要事実
被告人は、児童(A)であることを知りながら売淫させたとして、児童福祉法違反で起訴された。第一審および控訴審において、証人が自己の生年月日について供述した内容が、事実認定の資料とされた。弁護人は、自己の生年月日の知識は父母等から教えられたものに過ぎず、当該供述は伝聞証言(刑事訴訟法324条2項等)に該当するため、これを証拠とした判断は違憲・違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件における証人の生年月日に関する供述は、記録上、証人自身の認識として述べられている。生年月日の知識は、幼少期には父母等から教えられるものであるが、その後、家族との密接な生活や日常の体験を積み重ねることで、独自の確信を伴う自己の知識へと昇華される。このようなプロセスを経て得られた知識に基づく供述は、単なる伝聞の再述ではなく、本人の直接体験に基づく認識と評価できる。したがって、伝聞法則の適用を前提とする弁護人の主張は、その前提を欠くものである。
結論
自己の生年月日に関する証言は伝聞証拠には当たらず、これに基づき事実を認定した原判決に違法はない。
実務上の射程
自己の氏名、年齢、生年月日、親族関係といった「身分的事項」に関する供述の証拠能力を基礎付ける判例である。これらの事項は、形式的には伝聞に基づき知るものであるが、実務上は「自己の体験」に包含されるものとして、伝聞法則の例外(あるいは非伝聞)として広く証拠能力が認められる。答案上、年齢等の属性が争点となる場合に、伝聞禁止の原則(320条1項)に対する例外的な取扱いを正当化する理屈として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)3015 / 裁判年月日: 昭和33年3月27日 / 結論: 棄却
一 児童福祉法第六〇条第三項本文は、児童を使用する者において「児童の年齢を知らないこと」が刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」にあたらない旨を規定するものである。 二 児童福祉法第六〇条第三項但書は、児童を使用する者において児童の年齢を知らないことにつき「過失のない」ことが、刑訴法第三…