一 児童福祉法第六〇条第三項本文は、児童を使用する者において「児童の年齢を知らないこと」が刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」にあたらない旨を規定するものである。 二 児童福祉法第六〇条第三項但書は、児童を使用する者において児童の年齢を知らないことにつき「過失のない」ことが、刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」にあたる旨を規定するものである。
一 児童福祉法第六〇条第三項本文にいう「児童の年齢を知らないこと」と刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」 二 児童福祉法第六〇条第三項但書にいう「過失のない」ことと刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」
児童福祉法34条1項6号,児童福祉法60条1項,児童福祉法60条2項,児童福祉法60条3項,刑訴法335条2項
判旨
児童福祉法34条6号違反の罪において、児童の年齢を知らないことは犯罪の成立を妨げないが、そのことに過失がない場合は例外的に犯罪成立が阻却される。
問題の所在(論点)
児童福祉法34条6号(児童に淫行をさせる行為の禁止)および同法60条違反の罪において、対象者が児童であることの認識(故意)が欠ける場合に、いかなる条件で犯罪の成立が阻却されるか。同法60条3項の解釈が問題となる。
規範
児童福祉法60条3項の規定を総合すると、児童を使用する者が児童の年齢を知らないことは、原則として犯罪の成立を妨げる理由(刑訴法335条2項)にはならない。もっとも、同項但書の規定に基づき、児童の年齢を知らないことにつき「過失がない」ときは、例外的に犯罪成立阻却事由となる。
重要事実
被告人が、児童福祉法34条6号に違反して、満18歳に満たない児童に淫行をさせる行為を行った。被告人は児童の年齢を知らなかったと主張したが、原審は同法60条3項の趣旨に基づき、過失の有無を検討した上で被告人の有罪を認めた。
あてはめ
児童福祉法60条3項本文は、児童を使用する者が年齢を知らないことを理由として処罰を免れることができないと定めており、年齢の不詳は原則として故意を阻却しない。一方で同項但書は、過失がない場合に限り処罰を免れる旨を規定している。本件においても、この規定に従い、年齢を知らないことに過失がある限り、犯罪の成立は妨げられないと解される。
結論
児童の年齢を知らないことは原則として犯罪の成立を妨げないが、過失がない場合に限り犯罪は成立しない。原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
行政刑法における故意の要否や過失の立証責任の分配が問題となる場面で参照される。特に「年齢の認識」が構成要件要素となる事案において、法律が特別に過失の有無を犯罪成立の要件としている場合の判断枠組みを示すものとして重要である。
事件番号: 昭和29(あ)1539 / 裁判年月日: 昭和31年9月11日 / 結論: 棄却
児童福祉法第六〇条第三項により故意犯と過失犯とに同様の法定刑を科することは憲法第一一条に違反しない。