児童福祉法第六〇条第三項により故意犯と過失犯とに同様の法定刑を科することは憲法第一一条に違反しない。
児童福祉法第六〇条第三項の合憲性
児童福祉法60条1項,児童福祉法60条3項,憲法11条
判旨
児童福祉法における年齢の不知に関する規定において、過失犯を故意犯と同様の法定刑で処断することは、児童福祉の保障という公共の福祉の観点から必要であり、憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
児童福祉法60条3項が、児童の年齢に関する過失犯を故意犯と同一の法定刑で処断している点について、憲法の定める基本的人権の保障に違反しないか。
規範
公共の福祉のために必要な場合、特定の犯罪態様の実状に鑑み、児童福祉の保障を徹底させるという目的達成のために故意犯と過失犯とに同様の法定刑を科すことは、憲法の趣旨に反しない。
重要事実
被告人は児童福祉法34条1項6号に違反し、児童に淫行をさせる行為に及んだ。同法60条3項は、児童を使用する者が児童の年齢を過失によって知らなかった場合、これを知っていた場合と同様の罰則を科すと規定している。被告人側は、過失犯を故意犯と同様に処罰するこの規定が基本的人権を侵害し、憲法11条等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
児童に淫行をさせる犯罪の実状に鑑みると、児童の年齢の不知に過失がある者を故意犯と同様に厳罰に処すことは、児童福祉の保障を徹底させるために必要不可欠な措置である。このように公共の福祉の増進を図る目的において、刑罰上の区別を設けない合理的な必要性が認められる以上、人権侵害の不当な規定とは評価できない。
結論
児童福祉法60条3項の規定は憲法に違反しない。したがって、被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
刑事処罰における責任主義の例外的な構成(故意と過失の刑的均衡)が、公共の福祉による制約として容認される限界を示す。特に福祉目的の行政刑法的な法規において、特定の保護益(児童の健全育成等)が極めて高い場合には、厳格な責任原則の緩和が正当化される根拠として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)5497 / 裁判年月日: 昭和29年9月11日 / 結論: 棄却
一 所論刑訴三二一条第一項第三号但書の「特に信用すべき情況」については事実審の裁量規定に関する事項であり(昭和二五年(あ)第一六五七号、同二八年七月一〇日第二小法廷判決、集七巻七号一四七四頁参照)、また所論供述者が一八歳未満の者であることの一事をもつては、未だ右刑訴同条の「特に信用すべき情況」でないといい得ないことは論…