判旨
控訴審において主張されず、原判決が判断を示していない事項について、上告審で新たに違憲等を主張することは、適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
控訴審において主張されず、したがって原判決が何ら判断を示していない事項を、上告審において憲法違反等の上告理由として新たに主張できるか(刑訴法405条の「違憲」等の主張の許容範囲)。
規範
刑法及び刑事訴訟法の規定に鑑み、上告審は事後審としての性質を有する。したがって、上告理由は、原則として控訴審で主張され、かつ原判決が判断を示した事項に限定される。控訴審で主張されなかった新事実や新見解に基づく違憲主張などは、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人は第一審において「相当酒に酔っていたので憶えていない」旨を述べていたが、弁護人からは責任阻却事由(心神喪失・心神耗弱等)の主張はなされていなかった。その後、控訴審を経て上告審に至り、弁護人及び被告人本人が、原判決が判断を示していない事項について憲法違反や事実誤認等を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、被告人側の違憲主張は控訴審で全く主張されておらず、原判決もそれについて判断を下していない。被告人が第一審で泥酔状態を供述していたとしても、責任阻却の法的主張が維持されていた形跡はない。したがって、事後審たる上告審において、原判決の判断を経ない事項を攻撃の対象とすることは、刑訴法の予定する上告理由の制限に抵触するといえる。
結論
本件上告は、適法な上告理由に当たらない事項を主張するものとして、棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟において、憲法違反等の主張を上告審で行うためには、原則として控訴審までに当該事実または論点を提出し、判断を求めておく必要がある。事後審構造を維持するための手続的制約として機能する判例である。
事件番号: 昭和26(あ)1550 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張されず、原審が判断していない事項(憲法13条違反、31条違反等)を上告理由とすることは適法ではない。また、量刑不当や事実誤認の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、原判決が示した事実の判断が憲法31条に違反し、また刑罰が過酷であると…
事件番号: 昭和30(あ)1146 / 裁判年月日: 昭和30年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条に基づく上告理由の判断において、実質的な事実誤認の主張や証拠の取捨選択に対する不服は、憲法違反を形式的に主張しても適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、原審の事実認定に誤りがあるとして上告した事案。弁護人は憲法31条違反(適正手続)を主張したが、そ…
事件番号: 昭和25(あ)2121 / 裁判年月日: 昭和26年3月27日 / 結論: 棄却
所論の点はいずれも、原審において控訴趣意として主張されなかつた事項であり、また刑訴第三九二条二項は同条項所定の事由に関し控訴審に職権調査の義務を課したものではないから、原判決はこれらの点についてなんら判断を示していないのである。従つてこのような事項につき、単純に原判決の法令違反を主張することはもちろん、これを判例違反と…