所論の点はいずれも、原審において控訴趣意として主張されなかつた事項であり、また刑訴第三九二条二項は同条項所定の事由に関し控訴審に職権調査の義務を課したものではないから、原判決はこれらの点についてなんら判断を示していないのである。従つてこのような事項につき、単純に原判決の法令違反を主張することはもちろん、これを判例違反として主張するのであつても、このような主張は刑訴第四〇五条の定める適法な上告理由にあたるものということはできない。
一 控訴審の職権調査の性質 二 控訴審判決が判断していない事項について判例違反の主張と上告の適否
刑訴法405条2号3号,刑訴法392条2項
判旨
控訴審において控訴趣意として主張されず、控訴審が職権判断もしなかった事項については、上告審において判例違反等の適法な上告理由として主張することはできない。
問題の所在(論点)
控訴審において主張されず、かつ控訴審が判断を示さなかった事項について、上告審において判例違反等の上告理由(刑訴法405条)として主張することが認められるか。
規範
刑事訴訟法405条所定の上告理由を主張するためには、原則として当該事項が控訴審において審判の対象となっていたことを要する。控訴審が職権調査の義務を負わない事項について判断を示していない場合、これを判例違反等として上告理由に掲げることは許されない。
重要事実
被告人および弁護人が上告を提起したが、弁護人が上告理由として主張した事項は、いずれも原審(控訴審)において控訴趣意として主張されていなかった。また、原審はこれらの事項について職権による判断も示していなかった。
あてはめ
弁護人が主張する事項は、原審において控訴趣意として現れていない。また、刑訴法392条2項は控訴審に対し、同条項所定の事由について職権調査の義務を課すものではない。したがって、原審が判断を示していない事項について、単純な法令違反や判例違反を主張しても、刑訴法405条の定める適法な上告理由には該当しないと解される。
結論
本件の上告理由は適法なものとは認められず、刑訴法411条を適用すべき事由も認められないため、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
上告審の事後審的性格を明らかにする判例である。控訴審の判断(不作為を含む)の当否を争うのが上告審である以上、控訴審に審判の機会が与えられなかった事項は原則として上告理由にできないという制限を示す。実務上は、控訴審での主張漏れが上告審での主張を封じることを念頭に置く必要がある。
事件番号: 昭和26(あ)2126 / 裁判年月日: 昭和26年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が刑事訴訟法405条に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を取り消すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が上告を申し立てたが、提出された上告趣意書の内容および訴訟記録の精査の結果、適法な上告理由が見当たらない事案である。…