判旨
控訴審において、第一審で適法に証拠調べが行われた鑑定書について改めて証拠調べを行わなくとも、事後審としての性格に鑑み違法ではなく、判断遺脱も認められない。
問題の所在(論点)
第一審で適法に証拠調べがなされた証拠について、事後審である控訴審において再度証拠調べを行わずに判断の基礎とすることが、刑訴法上の手続違背や判断遺脱に該当するか。
規範
現行の刑事訴訟法における控訴審の構造(事後審)においては、第一審で適法に証拠調べがなされた証拠につき、控訴審で改めて証拠調べを行わなくても手続上の違法はない。また、控訴審において改めて証拠調べをしていないからといって、当該証拠に対する判断遺脱があるとは解されない。
重要事実
被告人が心神喪失、心神耗弱、または緊急避難の成立を主張して上告した事案。第一審ではA医師の鑑定書について適法な証拠調べがなされていたが、控訴審(原審)では当該鑑定書の証拠調べがなされていなかった。弁護人は、控訴審が鑑定書について判断を遺脱し、審理不尽であると主張した。
あてはめ
第一審においてA医師の鑑定書は適法に証拠調べが完了しており(記録551丁、557丁)、控訴審は第一審の記録に基づき判断を行う事後審である。原判決は、被告人が本件犯行当時、心神喪失や心神耗弱の状況になく、緊急避難行為と目すべき点もないことを認めており、第一審の証拠を前提とした判断を示している。したがって、控訴審で重ねて証拠調べを行わなかったことは、新刑事訴訟法の規定上、何ら違法ではない。また、証拠調べを直接行っていないことをもって、当該鑑定書に対する判断を遺脱したとは評価できない。
結論
控訴審において第一審の証拠を改めて調べ直さなくても違法ではなく、判断遺脱の主張は理由がないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法における控訴審の事後審的性格を確認する際、特に第一審証拠の取り扱いに関する限界を示す先例として活用できる。ただし、本判決は簡潔な決定形式であり、具体的な事実認定の適否に深く踏み込むものではない点に留意が必要である。
事件番号: 昭和27(あ)4959 / 裁判年月日: 昭和29年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所が訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみによって直ちに判決できると認める場合には、新たな証拠調べをせずに破棄自判することが可能である。また、自白の補強証拠となり得る書類を自白の取り調べより先に調査することは、刑事訴訟法301条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人B、C、Aの各上告事件…