判旨
控訴審で主張されず、原審が判断していない事項(憲法13条違反、31条違反等)を上告理由とすることは適法ではない。また、量刑不当や事実誤認の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない。
問題の所在(論点)
控訴審において主張・判断されていない憲法違反の主張、および量刑不当や事実誤認の主張が、刑事訴訟法上の適法な上告理由(405条)となるか。
規範
1. 控訴審で主張されず、かつ原審が判断していない事項については、適法な上告理由とはならない。2. 刑事訴訟法405条各号に該当しない量刑不当や単なる事実誤認、証拠の証明力に対する不服は、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人の弁護人は、原判決が示した事実の判断が憲法31条に違反し、また刑罰が過酷であるとして憲法13条に違反すると主張した。しかし、これらの憲法違反の主張は、いずれも控訴趣意として主張されておらず、原審(控訴審)もこれについて判断を下していなかった。さらに、弁護人は原判決に事実誤認があることや、量刑が不当であることを上告理由として主張した。
あてはめ
まず、憲法13条および31条違反の主張について検討する。これらは控訴趣意として主張されておらず、原審の判断も経ていないため、上告審での審判対象から外れる(適法な上告理由とならない)。次に、刑罰が過酷であるとの主張は、実質的には量刑不当の主張にすぎず、刑訴法405条の理由に当たらない。さらに、事実認定に関する不満は事実誤認や証明力の判断を争うものであり、経験則違背等の特段の事情(411条適用事由)も認められないため、適法な理由とはいえない。
結論
本件上告は、適法な上告理由を欠くため、刑事訴訟法408条により棄却される。
実務上の射程
上告審の構造が事後審であることを示す。実務上、上告理由書において控訴審での主張・判断を経ていない新事実や新見解に基づく憲法違反を主張しても、原則として門前払いされる。答案上は、上告理由の適格性(405条)を論じる際の基礎知識として重要である。
事件番号: 昭和56(あ)1809 / 裁判年月日: 昭和57年1月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が事実誤認、単なる法令違反、または量刑不当の主張に留まる場合は、刑訴法405条所定の上告理由に該当しないため、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:弁護人および被告人本人が、原判決に対し事実誤認、単なる法令違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在…