刑訴三二一条一項二号但書にいう「公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況」が存するかどうかの判断は、事実審裁判所の合理的な裁量にまかされるのであつて、その判断について必ずしも特段の証拠調を要するものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決、集五巻一二号二三九三頁参照)。そして、右のように解する結果が、所論のように憲法三七条二項違反とならないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二三年(れ)八三三号同二四年五月一八日の大法廷判決、集三巻六号七八九頁)の趣旨に徴して明らかである。
刑訴三二一条一項二号但書の規定の趣旨と憲法三七条二項
憲法37条2項,刑訴法321条1項2号
判旨
刑訴法321条1項2号但書の「供述を信用すべき特別の情況」の判断は事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられており、特段の証拠調べを要するものではない。
問題の所在(論点)
刑訴法321条1項2号但書の特信情況の存否を判断するにあたり、別途特段の証拠調べを要するか。また、事実審の裁量に委ねる解釈が憲法37条2項に違反しないか。
規範
刑訴法321条1項2号但書にいう「公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況」(特信情況)が存するかどうかの判断は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。また、当該判断に際して必ずしも特段の証拠調べを要するものではない。
重要事実
本件の上告人は、原審において刑訴法321条1項2号但書に基づき検察官面前調書等が証拠採用されたことについて、特信情況の判断に関する手続的瑕疵や、憲法37条2項(証人尋問権)への違反を主張して上告した。
あてはめ
特信情況の判断は、供述がなされた際の外部的状況を総合的に考慮して決せられるべき性質のものであり、事実審裁判所の合理的な裁量権の範囲に属する。本件においても、記録に照らし特段の証拠調べを経ずに当該情況の有無を判断した原審の訴訟手続に不合理な点は認められず、裁量の逸脱はない。このような解釈は、最高裁大法廷判決の趣旨に照らし、憲法37条2項が保障する対質尋問権を侵害するものではないと解される。
結論
特信情況の判断は事実審の合理的な裁量に委ねられ、特段の証拠調べは不要である。また、この解釈は憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項2号)の要件検討において、特信情況の判断手法を論じる際の根拠となる。実務上は「外部的附随的事情」により判断すべきとされるが、その判断権限が事実審の裁量にあり、独立した証拠調べ手続を必須としないことを示す際に有用である。
事件番号: 昭和29(あ)2540 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官面前調書の証拠能力に関し、伝聞例外の要件たる『特信情況』の存否は事実審裁判所の裁量に属する。また、公判において被告人に反対尋問の機会が十分に与えられていた場合には、当該調書の証拠採用は憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは公職選挙法違反等に問われた事案において、検察官作成のAら計6…