公判期日における供述より信用すべき特別の情況が存するか否かの判断は、結局事実審裁判所の裁量にまかされているとするのが、当裁判所判例である。(昭和二六年(あ)一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決、集五巻一二号二三九三頁。昭和二七年(あ)六四二号同二八年六月二三日第三小法廷判決)そして、「信用すべき特別の情況」の存否の判断については、必ずしも特段の証拠調を要するものでないから、第一審の手続に所論の違法はない。
一 刑訴法第三二一条第一項二号但書の規定の趣旨 二 「信用すべき特別の情況」存否の判断に関する証拠調の要否
刑訴法321条1項2号但書
判旨
刑事訴訟法321条1項2号後段にいう「信用すべき特別の情況」の存否の判断は、事実審裁判所の裁量に委ねられており、その判断に際して必ずしも特段の証拠調べを要するものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法321条1項2号後段の要件である「供述が前の供述よりも信用すべき特別の情況の存下においてされたものであるとき」の判断主体および判断方法が、裁判所の裁量に属するか、またその判断に特段の証拠調べを要するか。
規範
刑事訴訟法321条1項2号後段の伝聞例外(特信情況)の存否の判断は、証拠能力の前提要件に関する判断として、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。また、この判断にあたっては、必ずしもそのための独立した特段の証拠調べ(外部的事実の立証)を必要とせず、当該供述調書自体や他の証拠、公判における供述態度等を総合して判断することが可能である。
重要事実
被告人A、B、Cに対し、検察官面前調書の証拠能力が争われた事案。弁護人は、第一審において供述調書が採用されたことに対し、公判期日における供述よりも信用すべき特別の情況が存するか否かの判断手続に違法があり、憲法違反にあたると主張して上告した。具体的には、特信情況の存否を判断するための手続的妥当性が問題となった。
あてはめ
最高裁判所は、過去の判例(昭和26年11月15日判決等)を引用し、公判期日の供述より信用すべき特別の情況が存するか否かの判断は、結局のところ事実審裁判所の裁量に任されていると判示した。また、その存否の判断を行うにあたり、改めて特段の証拠調べを実施することは法律上の必須要件ではないとした。本件においても、第一審が記録に基づき適切に判断したものであり、手続上の違法は認められない。
結論
特信情況の判断は事実審裁判所の裁量事項であり、判断にあたって特段の証拠調べを要しない。したがって、第一審の手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
伝聞例外(321条1項2号)の特信情況に関する古典的判例である。答案上は、特信情況を「外部的事況」から判断すべきとする通説・実務の立場を補強する際に、裁判所の広範な裁量と判断手法の任意性(証拠調べの不要)を示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5476 / 裁判年月日: 昭和29年7月20日 / 結論: 棄却
刑訴三二一条一項二号但書にいう「公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況」が存するかどうかの判断は、事実審裁判所の合理的な裁量にまかされるのであつて、その判断について必ずしも特段の証拠調を要するものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決、…