判旨
証人1名の供述のみに基づいて事実を認定することは、刑事訴訟法上の証拠法則に反するものではなく、自由心証主義の範囲内として許容される。
問題の所在(論点)
証人1名の供述のみに基づいて犯罪事実を認定することが、証拠法則ないし適正手続に反し許されないのではないか。
規範
刑事訴訟法上、証人1名の供述のみに基づいて事実の認定をしてはならないという証拠法則は存在しない。裁判所は、提供された証拠の証明力を自由な判断によって評価し、有罪の認定を行うことができる(自由心証主義)。
重要事実
被告人が暴行の事実を否認し、上告した事案。被告人は、暴行の事実が存在しないこと、および巡査部長という特定の証人1名の証言のみに基づいて事実認定がなされたことは訴訟法違反であり憲法に違反すると主張した。
あてはめ
本件において、原審は巡査部長の証言を根拠に暴行の事実を認定している。証拠の評価は裁判所の合理的な裁量に委ねられており、特定の証拠能力を有する証言が1名分であるからといって、直ちにその証明力が否定されるものではない。記録を精査しても、当該証言に基づく事実認定に不合理な点は認められず、証拠法則に違反する事由は見当たらない。
結論
証人1名の供述のみによる事実認定は適法であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
自由心証主義(刑訴法318条)の原則を確認する判例である。答案上、供述証拠の信用性評価において「補強証拠の要否」が問題となる自白(319条2項)等の例外を除き、単一の証言のみで事実認定を行うことの正当性を基礎付ける際に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)4806 / 裁判年月日: 昭和29年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一の供述者の供述内容に矛盾がある場合でも、裁判所はその一部を採用し他の部分を棄てることにより、他の証拠と相俟って事実を認定することができる。 第1 事案の概要:被告人が特定の伝言を依頼したか否かが争点となった事案において、原判決は供述者Aの各供述調書を採用した。これらの調書内には互いに矛盾する内…