判旨
供述証拠の中に伝聞事項が含まれている場合であっても、裁判所が当該供述から伝聞部分を除外した上で、他の証拠と総合して事実を認定することは適法である。
問題の所在(論点)
証人の供述の中に伝聞事項が含まれている場合において、裁判所が当該供述から伝聞部分のみを排除し、残余の供述を他の証拠と総合して事実認定の基礎とすることの可否。
規範
伝聞証拠の排除に関する原則(刑訴法320条1項)との関係において、証人の供述内容に伝聞事項が含まれる場合であっても、裁判所が当該供述のうち伝聞にあたる部分を除外し、非伝聞部分のみを証拠として採用して事実を認定することは許容される。
重要事実
被告人の刑事事件において、第一審判決は証人A、B、C、Dの各供述を証拠として引用し、有罪を認定した。これに対し弁護人は、当該供述に伝聞事項が含まれており、これを証拠としたことは違法・違憲であるとして控訴した。原判決(控訴審)は、第一審が引用した供述から伝聞部分を除外した残りの供述と、その他の証拠を総合すれば事実認定が可能であると判断し、量刑不当を理由に自判して被告人を科料50円に処した。弁護人はこれを不服として上告した。
あてはめ
本件において、原判決は第一審が援用した各証人の供述につき、判文上、伝聞事項に関する部分を明確に除外している。その上で、除外されなかった非伝聞部分の供述と、それ以外の適法な証拠とを総合して事実を認定している。このような証拠の評価および事実の確定プロセスは正当であり、伝聞排除法則に抵触するような違法や憲法違反は認められない。したがって、伝聞部分を除いた証拠に基づき刑を言い渡した判断に誤りはない。
結論
伝聞事項を含む供述であっても、裁判所が伝聞部分を適切に除外して非伝聞部分を証拠とすることは適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
証言の中に伝聞が含まれる場合に、証言全体を無効とするのではなく、伝聞部分を特定して排除し、それ以外の部分に基づき事実認定を行う実務上の手法を肯定したものである。答案上では、伝聞証拠の該当性を検討する際、供述のどの部分が伝聞でどの部分が非伝聞かを切り分け、非伝聞部分に証拠能力が認められることを論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)799 / 裁判年月日: 昭和29年6月23日 / 結論: 棄却
所論証人Aの証言については、同証言中伝聞にわたる部分は、第一審裁判所において排除決定をしていること記録上明らかであるから、第一審判決は、右の部分を除いて同証言を採証したものと解するを相当する。